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著名人インタビュー この人に聞きたい!
大九明子さん[映画監督]



第8章 映画監督を志す中高生に向けたメッセージ

「一刻も早く作品を撮り、人に見せて、揉まれる」

――映画監督を目指したいと思っている中高生にアドバイスをお願いします。

【大九】今は、フィルムじゃなくてビデオの機材が一家に一台あるような時代、スマホで撮れる時代。とにかくもうなりたいなら四の五の言わずに、1秒でも早く作品を撮ったほうがいいですね。作品を撮ってみる。客観的に見るということをするのが一番だと思います。
あと人に見せる。自己満足で終わらず、人に見せて批判をされて。そうすると作品って、自分で撮り終わった時には、なんかつまんないものを撮っちゃったなって思っても、人が何回か見ていくうちに、不思議となんか違うものに育っていったりするので、とにかく一刻も早く撮り、人に見せ、揉まれるっていうっていうことをした方がいいと思います。もう中学生でもやれますね、今は。

――批判を受けてへこんでしまう人も多いと思うのですが、ご自身なりの対処法などはありますか?

大九明子、インタビューカット8-1

【大九】あんまり世の中に期待しないことだと思います。
私は凄いマイナス思考なんで、打たれる心の準備はいつもしておくんですよね。「どうせ私なんかが褒められるはずがない」と。
だから褒められると異常に嬉しいけど、褒められないと「ほーら来た」くらいに思うようにして、気分を回避するようにしているんで、最初からそんなに期待していなければ、批判されても「でしょ」って言える・・・そのかわり、(作品を)作っていれば、誰かの心に届いた時に「ほら!ここにわかってくれる人がいた」というような思いを絶対に味わえると思うので、批判に屈しないでほしいですね。批判はどうせされるから。

――これから社会に出て行く若者へメッセージをお願いします。

【大九】どんな職業、どんな人生を送っていこうとも、自分で自分をちゃんと認めてあげてほしい。自分を否定しないでほしいなと思います。
私は、自分が好きなことを仕事にさせてもらうことができて、とても幸福なことだと思っているんですけれども、必ずしもそうとは限らないと思うんですよ。だからこそ、ちゃんと地に脚つけて粛々と生きて仕事をしている人を、本当に尊敬するし、自分で自分を認めてあげてほしいなと思います。

――今後の目標を教えてください。

【大九】映画を撮り続けていければもうそれだけで充分ですね。映画を撮り続けたいっていうことだけですね。


《編集後記》 映画監督として大事にしていることは「丁寧に仕事をすること」と「役者、スタッフが最高のものを作れる空気を作ること」。大九さんの、言葉はとても心に響きました。丁寧に準備をする。そして現場ではスタッフに丁寧に言葉をかけ気を配り、全員が力を発揮しやすい空気を作る。その積み重ねで、1カット、1カット味わいのある空気感が作られるのかな・・・と思いました。  「若手俳優がオーディションを受ける時のアドバイスをお願いします。」というスタッフの質問にも丁寧に答えてくださいました。 「オーディションの時って上手い下手ではなく、今やったことをこういう風に変えてみましょうかと言った時に、やれるかやれないかのところを見ています、私は。いっぱい作りこむよりも、真っ白な状態で臨んでくれた方が良いと思います。それと聴く耳を持ってくださる方がいいですね。」