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著名人インタビュー この人に聞きたい!
前原誠司さん[政治家・民主党 衆議院議員]

写真:前原誠司さん

1962年生まれ、京都大学法学部卒、専攻は国際政治学。松下政経塾8期生。
1991年4月京都府議会議員に最年少28歳で初当選。1993年衆議院議員に立候補し、以降5期連続で当選を重ねている。2005年9月より06年4月まで民主党の代表を務めた。専門は外交・安全保障問題。

ARROW 前原誠司氏の仕事白書


代表就任以前から、国内の教育現場へも積極的に視察を行う前原誠司衆議院議員。政府のニート対策、あるいは教育についての取り組みについてはまだまだ物足りないものがあるようです。野党からみた現在の教育行政の問題点、職業としての「政治家」の魅力、また「メール事件」のその後についても語っていただきました。

取材日:2006年5月



第1章 ニート・フリーターの増加と対策について

必ずしも「悪」だとは限らない。その視点を忘れると、ぎこちなく窮屈な世の中になってしまう。

――経済が回復基調にある中、今後はフリーターやニートは減少するという推測もありますが、それでも潜在的にはニートが60万人、フリーターが200万人と言われています。前原さんは、日本の今の教育に対して何が問題だとお感じですか。

前原誠司/政治家・民主党 衆議院議員

【前原】ニートにしてもフリーターにしても、すべて「悪」かというとそうではないと思います。特にフリーターの中には、自ら望んで、中には40歳ぐらいまで定職に就かずにアルバイトをして、お金がたまれば海外に出て見聞を広めるという生き方をする人たちもいるわけです。すべて悪だという観点に立つと、ぎこちない、窮屈な世の中になってしまうんだろうなと思っています。

ただ、望んでいないのにフリーターやニートになっている人たちには、政治がきっちり光を当てていくべきです。フリーターや正規雇用の問題は景気の問題と非常に関連がありますから、大きな経済効果からとらえていかなくてはいけないと思います。それに対して、ニートの問題はかなり個人の内面に入っていくことなので、十把一からげで解決できる問題ではありません。1対1で向き合う必要のある問題だと思いますので、それなりの丁寧さと我慢強さが求められるテーマではないかという気がします。

やはり豊かなんだと思います。生きるか死ぬかの世界では引きこもっていられません。

――日本でこれだけニートやフリーターが増加してしまった原因については、どのように分析されていますか。

【前原】おしかりを受けるかもしれませんが、やはり豊かなんだと思うんですね。

私は今まで40カ国以上を視察し、昨年も大変な内戦状況にあるスーダンに行ってきました。大虐殺が起き、内戦が起きている中で、まさに生きるか死ぬか、食うか食われるかの生活をしている人たちを間近で見ると、日本で起きているニート、フリーターの問題は、彼らからすると別世界ですね。

ですから先ほどのポジティブなとらえ方とは逆に、マイナスの面でとらえるとすれば、ある程度の平和な状況の中で、穴の開いたところが生まれてきている。ニート、フリーターは時代というものに大きく影響しているんじゃないかと思います。ほんとうに貧しく、内戦の中で殺されるかもしれず、食べるものもなくて自分が頑張らなくてはいけなかったら、引きこもってなどいられませんからね。そういう意味では、豊かさゆえの病気というものが蔓延(まんえん)しているのだろうと思います。

主体は公でも民でもいい、税金を使っただけの効果が上がったかというチェックが必要。

――

【前原】今の自民党政権は、遅まきながらさまざまなことを始めているとは思います。例えば政府はニート対策の事業についてコンペみたいなもの(※)をして、さまざまな団体に補助金を出しています。民間やNPO、NGOに任せる、それはそれでいいことだと思いますが、安易でもあります。何かの事業に対して補助金を出しても、それに対する費用対効果や分析については、あまりしないじゃないですか。出しっぱなし。それでは「対策をしています」のエクスキューズ(言い訳)にしかならない。ですから、主体は公でも民間でもいいんですが、税金を使う以上はどれだけの効果が上がったかというチェックが必要ではないでしょうか。

※コンペ……
建築設計競技のこと。最近では建築に限らずさまざまなプランニングに関する競技を含めて呼ぶこともある。

13hw編集長

――実は当社でも、文部科学省による草の根eラーニング事業を受託制作しています。確かに必要な対策ではあるんですが、実際に制作をしてみて、まさに前原議員のおっしゃるとおりで、費用対効果や分析については、あまりされないのが現状だと思います。我々が受託したケースは、いくつかのコンソーシアム全体での大きな予算がついているのですが、その予算に対して対象とする目標設定人数が非常に少ないのです。しかも問題なのは、現状では効果測定がほとんどされてはいません。仕事をいただいた身としては一生懸命やっていますが、これと同じようにして、厚生労働省、経済産業省などがニート対策に数百億円を使っているのだとしたら、少し怖い感じがします。

※草の根eラーニング事業……
経済産業省主導で行われる若年層を対象とした、人材育成のためのモデル事業。