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著名人インタビュー この人に聞きたい!
大九明子さん[映画監督]



第6章 映画を作る上で、大事にしていること

大九明子監督が向き合う「映画監督」という仕事とは?

――映画監督の仕事にはどんな作業があるんですか?

映画 『でーれーガールズ』 撮影現場にて<映画 『でーれーガールズ』 撮影現場にて>

【大九】その都度違うんですけど、まず脚本作業をしている時は、完全に自分一人のもの。
そこからスタッフを招いて、撮る準備を始めてくるともう自分だけのものじゃないんですよね。
どちらかというと決断するのが仕事になってきて、脚本を元に色々なスタッフが動きます。
例えば衣裳部なら衣裳部で「この登場人物はこんな服装をする子たちだと思うんですけどどうですかね?」と言われて、(監督は)「はい、そう思います」「いいえ、違うと思います」と決断をしていく仕事です。
現場でもカット・オッケー・NGということも含めて決断です。

そこは集団で各セクションがそれぞれの才能で、素晴らしいものを提案してくるので、面白いと思うものをどんどん取り入れて決断していく。
編集作業に入るとわりと個人的な仕事になってきます。だからその都度その都度、居かたが違うものではあるんですよね。

「丁寧に」「空気を汚さない」

――映画監督として大事にしていることはありますか?

【大九】丁寧に仕事をするっていうことですかね。全ての局面において丁寧に仕事をする。
それはやっぱり自分にとっても、大事な映画があるように「この映画がどなたかにとって大事な映画になってくれたら嬉しいな」っていう思いがあるので。そういう大事な映画として恥ずかしくないものを作らなきゃいけないっていう思いがあります。よくパッと映像で浮かぶのが、深作欣二監督の「仁義なき戦い」のタイトルです。あの時代の先輩に聞くと映画への本気度が半端じゃなくて「その本気度に私の今の本気度は恥ずかしいものじゃないだろうか」っていうことをふと問いかける時が現場でもよくあるんです。
そういう意味で「仕事を丁寧に」色んな局面で続けるっていうことが大事にしていることですかね。

――撮影現場で気をつけていることはありますか?

【大九】撮影が思うように進まなくても動揺せず、丁寧に進めてさえいれば大丈夫だと考えるようにしています。
時間の制約がなければ、本当はとことんやりたいと思う。だけど何を優先すべきかってことをいつも現場では考えなくてはいけない。限られた撮影時間の中で色々取捨選択する中で、あきらめなきゃいけない時もあります。
ただその時に必ず、そのあきらめている中でのB案みたいなことはやるようにして、全体の空気としてネガティブにならないように、気をつけています。例えばNGが何回かあったとしても、それは俳優のせいじゃなくて自分がそういう空気の準備をすることが足りなかったからだと思うようにしています。何回かテイクを繰り返していると(スタッフの間で)「あ、監督納得してないな」っていう空気が蔓延してくることもあるので、そういう時にこれなら上手くいくだろうという違うアイディアを言って、結果上手くいって(皆が)気分よくそのシーンの撮影を終わるということをなるべくするようにしています。空気を汚さないことっていうことですかね。

――監督が場の空気を作るんですか?

【大九】そうですね。でも理性がふっとんでいると一番最初に汚していたりするんですけど。ついつい言葉がきつくなってしまったりとかするんですけど、なるべく言葉遣いに気をつけるようにしていたりとか。普段は割りと汚い言葉を使うことが多いんですけど、現場では凄く気をつけて丁寧語、美しい言葉を使おうと心がけていますね。若い俳優さんにも気をつけて「さん」付けで呼んだりしてます。だんだん親しくなってくるとあだ名で呼んだりすることもありますけど。