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著名人インタビュー この人に聞きたい!
はまのゆかさんさん[絵本作家/イラストレーター]

写真:はまのゆかさんさん
1979年大阪府生まれ。京都精華大学マンガ専攻卒。
大学在学中に、村上龍『あの金で何が買えたか』の挿画でデビュー。
以後、村上龍『13歳のハローワーク』、ロベルト・カルロス『ちいさくても大丈夫』など多くの話題作でイラストを手がけた。絵本の創作にも意欲的に取り組み、これまで発表した作品に『mamechan』『ペットショップ・モピ』『だんじりまつり』『いもほり』がある。2007年、日本漫画家協会賞特別賞を受賞。『新13歳のハローワーク』『13歳の進路』(ともに村上龍著・幻冬舎より10年3月発売)を手がけた。

=> はまのゆかさんのHP(http://www.hamanoyuka.net/)

作家・村上龍氏の『13歳のハローワーク』の挿絵でおなじみの、はまのゆかさん。心の温かさをそのまま絵にしたような、ほのぼのとした雰囲気の筆致は多くの読者を魅了し、着実にファンを増やしています。そんなはまのさんが、絵を描いて生きていこうと決意したのは、高校で進路について考えたとき。自分の「好き」を最大限に生かせるのが、絵本作家だと思い至ったのです。

取材日:2010年7月/取材・文 野口啓一/取材協力 GALLERY SPEAK FOR

はまのゆかさんのタイプ別診断  << 真理の探究者 >>
■このタイプの傾向・・・興味関心の方向:じっくり深める/物事のとらえ方:抽象的イメージに着目/結論の出し方:頭で考える
■このタイプの偉人・・・ベートーベン/キューリー夫人
■このタイプに多い仕事分野・・・1位:「ゲーム・アート・デザイン」の仕事/2位:「生き物」に関わる仕事/3位:「IT・WEB」の仕事


第1章 絵を描くことが好き。子どもが好き。2つを仕事にできるのが、絵本作家でした。

――「画家」と「保母さん」。小学生のときに芽生えた、2つの夢。

はまのゆか、インタビューカット01

【はまの】小さい頃の私はおとなしく、保育園ではカバンを抱えて部屋の隅にいるような子でした。小学生のときは、親しい子とはお互いの家を行き来して一緒に宿題をしたり、おやつを食べたりしましたが、友達は多い方ではありませんでした。かといって引っ込み思案というわけでもなく、4年生のときは学級委員を任され、6年生のときには演劇で台本作成から演出、役者までやりしました。そんなときの私は、どうやって期待に応えようかと積極的なんです。

私が絵を描きはじめたのは、3、4歳の頃です。そばに落書き帳と色鉛筆があったのが、きっかけだと思います。その頃は、家の周りにはえている草花などを描いていました。小学校に入ってから、5歳年上の近所のお姉さんがうちによく遊びに来て、「こうしたら、もっとキレイに描けるよ」とアドバイスしてくれました。また、2年生のときは、担任の先生は絵が上手で、授業が早く終わると黒板に動物の絵を描きながらお話をしてくれたんです。それがとても楽しかったですね。先生に年賀状を送ったら、手描きイラスト入りの返事をもらい、嬉しかったです。その影響もあると思うのですが、その時の文集には、「画家になりたい」と書いていました。

はまのゆか:保育園に通っていた頃。

その一方で、私は小さい子が好きでした。そのため、卒業文集では、「将来は保母さんになりたい」と書きました。絵を描くのが好きだけど、将来なりたいのは保母さん。そんな想いが、中学まで続きました。

――高校で将来について考えたとき、進みたい道が見えてきた。

はまのゆか、インタビューカット03

【はまの】将来、絵を描く仕事をしたいと思うようになったのは、高校に入ってからです。絵を描くことが好きなことと、子どもが好きなことを考えたとき、絵本だったら両方をかなえられると思ったのです。それで、美術の先生に美大に進みたいと相談したら、「美大に行きたいのなら、絵の塾に通わないと合格できない」と言われ、絵の塾に通い始めました。私が絵を習ったのは、それが初めてです。両親は、勉強や進路についてとやかく言わない方で、私が美大に行きたいと言ったとき、反対もしませんでしたし、予備校にも行かせてくれました。

私は大阪に住んでいたので関西圏の美大を受験し、京都精華大学に合格しました。大学は美術系の学校だけあって個性的な人が多く、学長自ら年中Tシャツにジーンズといういでたちでした。そんな環境で私は、毎日のように動物園に行ってデッサンをやったり、友達とお互いをモデルにしてクロッキーをやったりして、練習に没頭していました。

はまのゆか:高校2年生の頃。中学、高校では吹奏学部に所属して、アルトサックスを担当。はまのゆか:デビュー前、作家・村上龍氏にファンレターとともに渡したイラストの一部。

そんな大学2年生のある日、大ファンだった作家の村上龍さんの講演会に行ったのです。そのとき、動物をテーマにしたカートゥーンをプリントしたハガキと、「大学で絵の勉強をしていて、ポストカードを作ったのでもらってください」といった内容の手紙をプレゼントしたんです。それが、村上龍さんの目に止まり、後日出版社から仕事を依頼したいと連絡がありました。

――努力を怠らない。それが、夢をつかむ基礎となり、プロであり続ける方法。

はまのゆか、インタビューカット06

【はまの】その仕事は、村上龍さんの『あのお金で何が買えたか』の挿絵でした。結局、2ヵ月で約130枚の絵を描いたのですが、学校に通いながらだったので、アパートに帰ってからは、とにかく絵を描き続けました。文字通り、寝ても覚めても。休むと、夢から覚めてしまいそうで怖かったというのもありました。この時は、何よりも憧れの村上龍さんと一緒に仕事ができたことが嬉しかったですね。

はまのゆか:アトリエでの仕事風景。

本格的に、絵で食べて行こうと思ったのは、大学を卒業するときです。以来、9年が経ち、初めてのお仕事をいただいてからはすでに11年経ちますが、挿絵など、お声掛けいただいた案件については、お客様の期待に応えられるよう、つねに意図を考えながら描いています。どんなに経験を積んでも、「これで一生安泰」ということはありません。だから、散歩の途中でスケッチしたり、駅前で人を観察してクロッキーを描いたりという訓練は、いまでも続けています。

高校生で、進路を悩んでいる生徒さんはたくさんいると思います。そんなときは、『13歳のハローワーク』にも書いているように、自分が好きなことからイメージを膨らませていけば、何か見つかると思います。見つかったら、あとはとにかく知識を深め、技術を磨くことです。その上で、仕事は人が運んできてくれるものなので、人間関係を大事にしてください。