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著名人インタビュー この人に聞きたい!
竹中平蔵さん[政治家・総務大臣 郵政民営化担当]

写真:竹中平蔵さん

1973年 一橋大学経済学部卒業、日本開発銀行入行。大蔵省や日米両国の大学で経済の研究を重ねる。1998年 小渕首相の諮問による「経済戦略会議」メンバーに加わる。2004年には参議院議員に初当選、現在総務大臣・郵政民営化担当。小泉首相の右腕となり辣腕(らつわん)を振るっている。経済学博士。

ARROW 竹中平蔵氏の仕事白書


銀行員から経済学者、そして総務大臣へ。「経済をテーマとした仕事」というスタンスは一貫しています。竹中大臣が「経済」に関心を持ったきっかけ、政治家という仕事のやりがい、現代の若者をめぐる職業選びの難しさなどをお話しいただきました。

取材日:2006年5月



第1章 一貫した仕事のテーマは「経済」

私はずっと同じ仕事をしています。ただ、その時々によって給料をくれる人が違うだけです。

――大臣ご自身のキャリアが、銀行員から始まって大学教授、大臣、国会議員と、大変職業が変わっているように見えますが、そこには一貫したテーマ、あるいは世の中に対して実現したいことを何か強くお持ちなのでしょうか。

竹中平蔵/政治家・総務大臣 郵政民営化担当

【竹中】かつてアメリカの友人から「ほんとうに仕事をよく変わっているね。アメリカ人よりも転職しているよ」と言われたことがあります。一般的には、日本人はアメリカ人ほど仕事を変わらないという感覚がありますよね。しかし、そのときに「いや、私は同じ仕事をやっています。ただ、その時々によって給料をくれる人が違うのです」。そう答えました。
銀行で経済調査の仕事をしたこともありますし、役所でエコノミストとして議論していた時期もあります。アメリカや日本の大学で経済学を教えていたこともあります。日本の研究所で理事長の仕事をしたこともあります。今は大臣をしていますが、大学卒業以来、経済を軸にして、どうしたら世の中がよくなるのか、日本がもっと豊かになるためにはどうしたらいいのかということをずっと仕事にしているので、仕事が変わったという印象は私自身には全くないんですよ。そういう意味では恵まれていたのかもしれません。自分の好きな──好きなというよりも、経済をよくしたい、あるいは世の中がどんな仕組みになっているのだろう、そういう関心のあることをずっと仕事にしてきた。自分ではそういうつもりです。

「こんなに一生懸命働いているのに、なぜもっと豊かになれないんだろう?」素朴な疑問が恩師の言葉と結びついた。

――「経済」を軸にして仕事をしようと決心したきっかけには、どんな体験があったのでしょうか。

【竹中】私は和歌山市という地方都市で生まれ育って、父親は小さな商売をやっていました。父親はほんとうに働き者で、朝早くから夜遅くまで店を開けて一生懸命働いて私たちを立派に育ててくれたわけですが、そのときに「こんなに一生懸命働いているのに、なぜもっと豊かになれないんだろうか」と思ったことがありました。
そんなとき、県立高校のある若い先生が「世の中のことをもっと知りたかったら、基本的なことをしっかり勉強しろ」と言われたんですね。基本的なこととは、目の前に関心の持てることはたくさんあるだろうけれども、そのもとになっている経済や法律や政治だ。そういうことをしっかり勉強しなさいと言われて、経済を勉強しようと思ったんです。
小学校から高校まで和歌山の田舎にいましたから、経済とは何か、なんて当時はわかりません。ただ、先生の「基本的なことをちゃんと身につけなさい、そうしたらいろんなことがわかってくる」という言葉が原体験としては大変印象的だったですね。

――普通の高校生が聞いたら右から左へ素通りする言葉のようにも聞こえますが、それが自分に引っかかり、原体験として残り続けた理由は何だと思われますか。

竹中平蔵/政治家・総務大臣 郵政民営化担当と代田氏

【竹中】そうですね。さっき言ったように、すごくまじめに働いている両親はもっと豊かになれるはずじゃないか、そのためにはどうしたらいいんだろう、そういうすごく素朴な思いが先生の言葉と結びついたのではないでしょうか。