HOME > この人に聞きたい! > 渡邉美樹さん(ワタミ株式会社 代表取締役社長)

著名人インタビュー この人に聞きたい!
渡邉美樹さん[ワタミ株式会社 代表取締役社長]

写真:渡邉美樹さん

明治大学卒業後、経理会社で会計業務を学び、運送会社で事業資金を貯める。1984年に会社を設立。「つぼ八」のFC店を経た後、独自ブランドの居食屋「和民」を展開。2004年郁文館夢学園の理事長にも就任し、現在は介護・農業・環境・教育の各分野へ事業を拡大中。自らの夢に実現予定の日付を記し、常に持ち歩くことで知られる若手経営者のトップリーダー的存在。高杉良の小説『青年社長』のモデルでもある。

ARROW 渡邉美樹氏の仕事白書


第1弾では、渡邉社長の仕事観・教育観についてお話しをしていただきました。その中で、人生の目標を設定させる「夢カウンセリング」に触れ、明確な目標を持った子どもが成果を出していることが、とても印象的でした。
今回は、さらに掘り下げ、渡邉社長が理事長をされている郁文館夢学園の理念や、中高校生が社会に出て行くときに求められるものについてお伺いしつつ、教育の役目について語っていただきました。



第4章 子どもたちの「夢」というスイッチをオンにするのが教育の役目

教育のあるべき姿を追求し、子どもたちの幸せだけを考えた

――郁文館夢学園の理事長に就任して5年になりますが、それまでは何が問題だったのでしょうか。

【渡邉】一番問題だったのは、やはり教育理念がなかったということでしょうね。今の日本の教育と一緒ですよ。要するに、子どものゴールが見えていない。教育を通してなさねばならない姿があいまいでした。そこで、教育のあるべき姿を打ち出すために、切磋琢磨する、毎日みんなが努力する、命懸けで必死になって仕事をする、という環境をつくりました。次に、この最終形に対して大事なグラウンドデザインを描き、計画化しました。今、それがどんどんどんどん詰まっていっています。何回も何回もやることで練れてきて、子どもたちに対してその夢教育がすっと入るようになってきました。この学校は変わりますよ。とてつもなく変わるでしょうね。

――今の郁文館夢学園の理念とは、どういうものですか。

写真:渡邉美樹氏

【渡邉】子どもたちの幸せのためだけに教育がある。この学校は、子どもたちの幸せのためだけにあるんだ。ほかのことは一切どうでもいい。子どもたちが幸せだったら、それでいいんだと。「子どもたち」という視点だけを持ったら、学校としてやるべきことが自ずと決まっていくんです。でも、みんなそれぞれの都合があるわけですよ。先生は夏休みをとりたいとかね。子どもたちが来たいと言ったら先生に夏休みは要らない、全部やれと。それでいいんですよ。たいていね、全部先生たちや親、学校側の都合で動いているんです。そういうのをゼロベースで組み立てればいいんですよ。

人格、生活習慣、そして経験・知識。この序列は間違えてはいけない

――10年後、子どもたちが社会に出るときに身につけておかなければいけない力とは、どんな力ですか。

【渡邉】三つあります。一つは絶対「人格」。人間というのはどうあるべきだとか、どう生きるべきなのかとかいうのが、まず絶対優先します。生きる力において、社会に出ていく上において、国語・算数・理科・社会ができなくたって、うそをつかない人のほうが絶対採用されますよ。だから、うそをつかない。他人に対して思いやりを持つ。あいさつがしっかりできる。自分の決意を持ったら、それに対してチャレンジできる。あきらめない心を持っている。こういうことは、すべてに優先します。

次に来るのは、人格をつくるもの。つまり、「生活習慣」です。だから、うちの学校では、遅刻は絶対に許さない。社会に出たとき、国語・算数・理科・社会ができるよりも、遅刻しない人のほうが優先されるに決まっているわけです。それは、幸せに通じるわけですよ。

そして、3番目で初めて「経験と知識」が必要。勉強ということですよね。子どもたちには無限の可能性がある。勉強することで、その無限の可能性、つまり「夢」というスイッチをオンにして、子どもたちの内発的なエネルギーを外に出していこうというわけです。だから、人格、生活習慣、それから経験・知識。これは序列を間違えたら絶対だめですね。

責任と関心を持つこと。そうすれば、自分がなすべきことが見えてくる

――中高校生が、これから社会に出ていく上で、どんなことに気をつけていったらいいんでしょうか。

写真:渡邉美樹氏

【渡邉】責任と関心でしょうね。責任と関心。これは今私がつねに自分の子どもたちに言っていることです。それは何かというと、この日本人に生まれたという責任、それからご飯が食べられるという責任、自分が若くて元気がいいことに対する責任、自分が例えば普通に中学に通えるということに対する責任、こういう責任をみんなわかっていないんです。当たり前のものだと思って受け止めているわけです。でも、そこに責任があるんだと。なぜならば、世界では1分間に幾人もの子どもたちが、ご飯も食べられずに死んでいっている現実を知れば、「私も何かしなきゃいけないな」と思うようになるわけですよ。責任というものをまず意識すること。

次に、関心なんですよ。愛の反対は無関心ですから。つまり、関心がないという状態は愛のない状態なんです。愛のない状態というのは、人間何をやっても成功しないし、失敗するんです。何をやっても幸せになれないんです。私は子どもたちに幸せになってほしいから、愛を持ってほしいんですよ。でも「愛を持て」というと、直接的で伝わりにくいから、「関心を持て」と言っているんです。つまり、自分以外の人に対して関心を持てと。自分のいない世界、自分が関係ない世界に関心を持てと。例えば、環境問題。「今はいい。でも、あと30年経ったら、この地球はどうなるんだろう?」と考えてみる。関心を持つことによって、初めてその子に愛が育つんですよ。愛が育つことによって、エネルギーがたまるんです。エネルギーがたまることによって初めて、スイッチをオンにしたときに、力が発揮できるんですよね。だから私はね、「関心と責任を持て」と。これをみんなに伝えたいですね。

――ありがとうございました。