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著名人インタビュー この人に聞きたい!
中田宏さん[政治家・横浜市長]
[INDEX]
- 第1章 政治家を職業だと思っていません
- 第2章 国政と地方行政の差
- 第3章 市長の「やりがい」と「つらさ」
- 第4章 行政としてできる職業観教育
- 第5章 将来を考え始めた人たちへのメッセージ
●第5章 将来を考え始めた人たちへのメッセージ
世の中は広いよ、仕事はたくさんあるよ、その数だけ楽しみと生きがいがあるよということを、まず理解してもらいたい。
――中田市長から、これから職業や将来を選ぶ中高生の皆さんにメッセージをいただけますか。
【中田】子どもたちというのは、情報がまだ十分得られていない。社会をまだ十分知らない。だから子どもたちは学んでいるんですね。その中で「あれがいい」「これがいい」がもちろんあっていいんです。そこに夢があっていい。知っている職業を語ることで、またいろいろな人間としての成長があっていい。ただ、狭い情報の中だけで物事を判断するというのは、いろいろな可能性があることを知らないまま価値観が形成されてしまうと思うんです。全部頭で理解する、というのは無理。あるいは狭い情報の中で決めてしまうのもだめ。頭で理解する唯一のことは、世の中、広いよ、仕事はたくさんあるよ、仕事の数だけ、そこに楽しみと生きがいがあるよということだけ。それをできる限り見たり聞いたりすればいい。
例えば映画を観たっていくつも仕事が出てくれば、そこに主人公の人生観や職業観が出てきて追体験ができるわけでしょう。小説を読むことも同じですよね。実際に買い物に行ったりレストランで食事をすれば、そこの人たち一人一人が見えてくる。町の中を歩いてみれば工場がある。その工場でつくっているものは単なる部品にしか見えないけれども、実はカメラになっていくのかもしれないし、自動車になっていくのかもしれないし、もしかしたら宇宙に飛び立っていく部品をつくっているのかもしれない。そうやって「社会は広いぞ」ということだけは、まず頭の中で理解をすることが大事かなと思いますね。
「やりたいことが見つからない」
――でも、振り返れば、新たな発見に飛びついていた昔の自分がいると思うんですよ。
【中田】中高生の人たちは、将来やりたいことがまだわからない人たちがいっぱいいると思うんです。もしかしたら、そのほうが多いかもしれない。だけれども、もう忘れているかもしれないけれども、振り返ってみたら、幼稚園のころとか、小学校のころ、「私はこれ、やりたい!」と言っていた人たちは結構いっぱいいたと思うんですね。そのときに何と言っていただろう。例えば幼稚園児は「幼稚園の先生になりたい」と言うわけ。これは比率として結構多い。「ケーキ屋さんになりたい」という人もいる。小学生になったら、サッカー選手や野球選手。こう言っていた子たちはかなりいるんだよね。
すなわちそれは何かといえば、幼稚園のときに知っている社会というのは幼稚園という社会しかなかった。そこで初めて幼稚園の先生という仕事に触れて「私も将来、幼稚園の先生になりたい」と思うわけですね。そのうちあそこに行ったらおいしいケーキを食べられる。ケーキ屋さんが帽子をかぶってケーキをつくっているのを見て「私もケーキをつくりたい」と思う。すなわち、社会の中で新たな発見をすることに対して飛びついていた自分がいると思うんですよ。
それが高校生ぐらいになって現実も踏まえながら考え始めると、だんだん「ケーキ屋と言ったってなあ……。どうやってやりゃ、いいのかな」「ケーキ屋でいいのかな、自分の人生は」と思ったりする。それはケーキ屋がいい悪いという話ではなくて、すべてに対してそういう疑問を持つことになると思うんですね。「プロ野球選手は、今さら無理だよなあ」という話になりますね。それはその人が持っている思考回路と、個性と、しかも現実というものを突き合わせた結果、自分としてはっきり「これだ!」というものが決まらない。現実もOK、自分の好みとしてもOK、出てきた情報全部が突き合わされてもOKというものがないから、多くの人たちからすれば「うーん、わからない……」という形になっちゃうんだろうと思うんですよ。
だけれども、社会は広いんですよ。その人の個性が一致し、やりたいという意志が働き、現実としても求められている仕事なんか、もういっぱいあると思うんですね。だから、さっき言ったところに尽きるけれども、世の中は広い。広い中に自分の知らない仕事の形はいっぱいあるし、その仕事の数だけやりがいと楽しさがある。そのことを今はしっかりと頭に刻んで、興味をどんどんかきたてていろんなものを見ればいい。僕は、それが今やってほしいことだと思いますね。
――ありがとうございました。
編集長代田のインタビュー後記
中田市長を語るときによく使われるキーワード“偏差値38からの挑戦”“若き国際的指導者”“クールビズスタイルの提唱者”などなど、そんな革新的なイメージとは裏腹に、取材前のインタビュー項目の確認は非常に綿密で、いったいどんな方なのだろうと、取材前から興味津々でした。
はたして、中田市長は「13歳のハローワーク」の書籍を手に、白いシャツの“クールビズ”で颯爽と現れました。開口一番、「ほら、村上龍さんからサインをしていただいたんだよ。」親しみやすい笑顔で話しかけられ、緊張も一気にほぐれました。
インタビュー中は、ご自身の著書を引用し、該当部分のコピーを手渡してくれたり、仕事白書への登録用アンケートにも、じっくりと時間をかけて回答してくださり、何事にも手を抜かず真剣なその姿勢に、感激しました。改めて持った中田市長の印象は、決して手を抜かず気概をもってぶつかる“誠実なリーダー”。
仕事白書のタイプ診断では、『明るい活動家』タイプでした。
「人の気持ちや期待を敏感に察し、現実的に役立つ対応をとることに長けています。」
なるほど…。
そんな中田市長でも、政治家の辛さについてのお話しされているときには、普段の顔とは違った少し辛そうな表情を垣間見せ、人間味溢れた側面を感じさせられました。
同じ、40代前半として、日本の行政をリードしている中田市長。たくさんのエネルギーをもらえました。私、代田も負けていられない、と強く感じました。
- No.39 大九明子さん
- No.38 はまのゆかさん
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