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著名人インタビュー この人に聞きたい!
中田宏さん[政治家・横浜市長]



第3章 市長の「やりがい」と「つらさ」

市民から「これはいいですね」と言ってもらったときは、非常に苦労した分、よかったなと思う瞬間ですね。

――もう一つ、読者からの「もっと教えて!フォーラム」への書き込みで、「政治家という職業は給料はいいと思うのですが、それ相応の厳しい仕事だと僕は思います。それで、“やっぱ政治家やってて良かったなぁ”とか“政治家やめたいなぁー。死ぬほどつらいよ”などあったら教えてください」という質問が来ているのですが、お答えいただけますか。

代田編集長

【中田】政治家でよかったなと思うことは、日々の行政展開の中で、市民にとって幸せを増すような決定をし、それに対して市民の皆さんからの反応があるとうれしいですね。日常業務については、なかなか反応は得にくいし、私が特段判断をしたことではないケースもいっぱいあるわけです。ただ、私が特に重要だなという案件について決定をし、そのことが制度や運用を変化させ、その変化に対して市民から「これはいいですね」と言ってもらったときは、非常に苦労した分、よかったなと思う瞬間ですね。

例えば横浜市では平成17年4月から、大都市では初めての取り組みと言えるものですが、ごみを合計で15に分別する仕組みを市民の皆さんにお願いしてきたんです。最初は面倒だなと言う人もいたけれども、今はごみが大きく減っていますし、分けてもらった分、再資源化することができて、自分たちがやったことがすごく大きな成果になっていることを市民の皆さんもだいぶ実感してくださっているんですね。最初は面倒だと思ったけれども、やはりこれにしてよかった、よくぞこういう仕組みにしてもらったという声を聞くと、市民の方に苦労をかけた分もあるんですけれども、やってよかったなと思います。そのことが子どもたちの地球環境に大きな影響を与えるわけだから、喜びも感じますね。

人間として耐え難い誹謗中傷もある。それでも、政策や信条を曲げず自分を貫くしかない。

【中田】一方で、もう政治家をやめたいなというようなことも、毎日のようにありますよ。市役所における物事の決定、市民からの要望、議会での議論を最終的にどうするかに対して市長の私が全面的に責任を負わなければいけない。そのプレッシャーというのは、大げさなように聞こえるかもしれないけれども、頭が休まってぐっすり寝たのは、正直この4年間でも数えるほどしかない。夏休みなどは「もう忘れるぞ」と思うけれども、それ以外は毎晩、次の日のことを考えたり、いろいろな緊張感があるから、それはもう大変ですね。

中田宏/政治家・横浜市長

人間としていやなのは、政策的なレベルの批判ではなく、非難、中傷、悪口を言われるケース。耐えなければいけないし、気にしないようにしますけどね。週刊誌にせよ人のうわさにせよ、多くの人は「火のないところに煙は立たず」ぐらいに思っている。だけれども権力というものが絡むと人格が変わる人がいっぱいいるんですよ。もう全く火のないところ、全く関係ないところに煙を立てますよ。要するに、私は今、権力というものを持っている側の立場。それをどうやって傷つけるかということを考えている人たちからすれば、政策とは全く関係ないこと、あるいはわざと曲解をして自分たちに有利な論理構成をする。または全然別件で人格を否定されたりとかね。こういうのは慣れろと言われても慣れたくもないです。でも、そのことによって政策や政治家としての信条を曲げないで自分を貫くしかないと思っていますね。