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著名人インタビュー この人に聞きたい!
中田宏さん[政治家・横浜市長]



第2章 国政と地方行政の差

国会議員、県会議員、市会議員。潜在的に序列のように考えている人が世の中に多いと思う。
しかし、そうじゃない。

――国政の場に身を置いたあと、2002年に市長選に立候補するわけですが、国政から地方行政に移るときの違和感というのは、政治家として大きなものでしょうか。

中田宏/政治家・横浜市長

【中田】そんなに違和感はなかったですね。私は国の仕事をしたかったから国会議員になったんです。何を言いたいかというと、市議会議員がいる。県議会議員がいる。国会議員がいる。これを序列のように考えている人たちが多い。どっちが偉いとか偉くないとかね、そんなように潜在意識において差をつけている人たちは世の中に多いと思うんですね。しかし、そうじゃなくて、県のことをやりたければ県議会議員を、地域の中での疑問点を解決していくということであれば市議会議員をやるという話です。私が国会に行ったのは、まさに国の仕事をしたかったから国会議員になったわけですね。

あまり違和感がなかったというのは、横浜市というのは日本でも一番大きい市なんですね。人口が間もなく360万人になるという非常に大きな市です。そういう意味で社会の矛盾を解いていくという中で、国全体を議論することとあまりギャップを感じませんでした。むしろ、この横浜市というところでいろいろな実践例をつくっていくことは、さまざまな形で日本全国に伝わっていくだろうと思いました。

市長は目の前の現実を動かし、即責任が問われる。国会議員とは責任感も緊張感も違う。

――今2期目になられて、市長、衆議院議員、秘書の違いや、仕事の上でおもしろい、つらいなと思うところに差はありますか。

【中田】そうですね、それこそ職業に貴賤なしです。政治という中におけるそれぞれのポジションの違いがあったとしても、みんなやりがいがある。一般論ではなく本気でそう思いますね。どのポジションにいても、僕はその中で一生懸命やろうと思う。

ただ、それぞれの仕事は明らかに違います。国会議員の場合は立法府として、法律をつくることがメインであり、横浜市長は行政側の長として日々の現実をどう動かしていくか、執行の最たる責任者ということになります。一つ一つの発言や行動にも間違いなく責任が問われます。もちろん国会議員だって責任は問われますが、行政の長として目の前の現実を動かしていると、言ったことに即、責任が問われる。やはり責任感も緊張感も違いますね。

特に今は「改革」が求められていますが、ルールを変えれば人は簡単に変わるかといったらそうはいかないわけで、現状や執行体制を見ながら、その中に新しいルールを具体的に落としていかなければいけないですね。議論を尽くして決めたとしてもいまの仕組みを変えることに反発は出るので、相当タフな精神力が求められます。そこが一議員とは違うところでしょう。

国際都市・横浜市だからこそできる外交もある。

――読者からの質問ですが、「市」というレベルから東アジアの外交に取り組むことはできないだろうか、つまり横浜市として、国の外交とは別の手段で働きかけを行い、政治的・経済的な効果を出していく結果、日本の外交が変わっていくようなことはできないだろうか、という内容です。その点はいかがでしょうか。

代田編集長

【中田】これは、できますし、実際に行っています。

特に横浜市は日本最大の人口を擁する政令指定都市ですから、諸外国とのお付き合いもたくさんありますし、国際都市としての歴史もあります。姉妹都市も8つあります。単なる姉妹都市ということだけにとどまらず、今日的な課題に対して積極的に外交を行う必要があると考えています。それは外国人が多く住む中華街や貿易港を持つ国際都市・横浜の歴史を踏まえると、国際交流の推進は市の発展の重要なポイントと考えているからです。

そこで、日中両国は難しい関係にありますが、私は今年(2006年)の5月に北京市とパートナー都市提携を結んできました。間もなくオリンピックをやる北京市と、お互いのスポーツ、文化等について交流をしていくということを決めました。

その足で今度は韓国に行きまして、釜山広域市とのパートナー都市協定を結んで、お互いがもっと行き来をするために釜山と羽田空港の間で直接飛行機が飛べるよう、それぞれの市が政府に働きかけていこうということになりました。

さらに釜山から今度は台湾に行きまして、台北市ともパートナー提携を結びました。台北市とは、横浜市に近い羽田空港からの行き来の再開も重要であるし、文化・芸術交流や、子どもたちの交流も深めていこうと考えています。台湾から子どもたちが日本にかなり来たがっている。横浜からも相互交流することによって、子どもの時分から国際性を持ち、隣国・近い地域の人たちとのコミュニケーションをしていくような機会をつくっていこうとしていますね。

現在、日本と台湾は国交がありません。これは都市だからこそやっていける外交だと私は思っています。東アジア諸都市との交流は国際都市・横浜だからこそやる必要がある。ある意味では国の外交では難しい部分を市という単位で交流を深めていき、お互いを尊重し合うレベルを保つ。そのためには人間同士が日ごろ付き合ったり、お互いの文化を知らないとだめなんですね。例えば韓流映画などがいろいろ入ってきて、韓国を知ることに役立っているわけですね。逆に、日本についても知ってもらわなければいけない。その基本はやはり人間と人間のつながり、交流ですよね。

国としては台湾と中国と同時に交流できない関係があったりするかもしれないけれども、横浜市はそこを克服していこうとしています。まさにそれが国際都市・横浜の答えになります。