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著名人インタビュー この人に聞きたい!
竹中平蔵さん[政治家・総務大臣 郵政民営化担当]



第2章 「政治家」という仕事のやりがい

「理論」と「現場」の両方に踏み込んでいくことが重要。その橋渡しをしていきたい。

――経済の仕事に取り組む思いを一貫して持ち続けながらも、大学教授と政治家というのは理論と現場ですから、実際には随分違うのではないかなと思います。そのあたりについてはいかがですか。

竹中平蔵/政治家・総務大臣 郵政民営化担当

【竹中】学者として経済を見ていたときと、政策責任者である大臣になったときを比較すれば、それは非常に違います。「なるほど、自分は今までこういうことを理解していなかったんだな」「経済学者として議論していたときには、この点に目が届いていなかったな」と思うことがたくさんあります。逆にほかの大臣や政治家の方と議論をしていると、「経済学的に見ればこうなのに、政治家の皆さんは必ずしもそこに親しみを持って見ているわけではないのだな」と思う部分がある。いろんなことがわかりますよ。それらをつないでいく中で、勉強することが日々たくさんあります。
それは向き不向きということではなく、両方に踏み込んでいくことが重要です。経済を勉強することと世の中の現実をきちんと見ること、その両方が必要なのです。

たとえ話になりますが、ロマン・ロラン(※)が大変面白いひとくだりを書いているんですよ。「すべての政治家は知識人を嫌っている。そして、すべての知識人は政治家を嫌っている」──これ、すごく意味深いでしょう。つまり、知識人や学者は、何か無責任でかっこいいことばかり言っていて、現実離れして何の役にも立たない。そういう思いが政治家の中にはある。逆に知識人から見ると、政治家というのは目の前の対策ばかりで本質的なことを考えていないという批判がある。
実はこうして批判し合っていることが世の中の不幸なんです。知識人はもっと政治家に近づけばいいし、政治家はもっと知識人に近づけばいい。私はたまたま学者から大臣になったという少々変わった立場なので、今はその橋渡しができればいいなと思っています。

※ロマン・ロラン……フランスの小説家(1866~1944)。代表作は『ジャン・クリストフ』

どういう政策を行うかで、どこかに住んでいる少年の未来が変わる。そう考えて仕事に打ち込むことが醍醐味ですね。

――経済の仕事についてキャリアを積まれた結果、現在は総務大臣の要職に就いていらっしゃるわけですが、仕事としてのやりがいや醍醐味を一番感じるのはどういうところですか。

【竹中】そうですね、大臣の仕事というのは、はっきり言ってものすごくしんどい仕事で、やりがいを感じる余裕は必ずしもありません。ですが、政策というものはすごく重要で、国の政策がいいか悪いかによって実にいろんな人に影響を与えると思います。
これもたとえ話になりますが、谷村新司──私、大好きなんですが、彼の作った「いい日旅立ち」という山口百恵さんの歌があるでしょう。
その歌詞の一節に「ああ、日本のどこかに私を待っている人がいる」。政府がどういう政策を行うかによって、どこかに住んでいる少年の未来が影響を受けるわけですよ。そう思って今の仕事に一生懸命打ち込むというのが醍醐味と言えば醍醐味ですね。