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著名人インタビュー この人に聞きたい!
前原誠司さん[政治家・民主党 衆議院議員]



第4章 これから仕事に就く人たちへのメッセージ

政治家の出来の良しあしによって、人々の生活は良くもなるし窮屈にもなる。

――13歳のハローワーク 公式サイトでは、第一線で活躍されている方に、その職業の魅力について、メッセージをいただいています。前原さんには、政治家を目指す子ども達に、ぜひその魅力についてお聞かせください。

前原誠司/政治家・民主党 衆議院議員

【前原】政治家というのは、ものすごく大事な仕事だと私は思っています。先ほどお話をしたように、皆さん方からお預かりした税金をどこに使うのか。救急車や消防車、警察官、自衛隊の出動、さらに小中学校で使う教科書も基本的に国民に無償で国が提供しています。こういうことを決めているのが政治です。これが機能しなければ、まともな教育も受けられない。現にお金がない人はけがをしても診てもらえない国があります。日本は「国民皆(かい)保険」という国民がみんな保険に入る仕組みを作っているので、日本のどこにいようが保険証を持っていれば3割の自己負担で基本的には診療を受けることができます。ですから、政治家の出来の良い悪いによって、いい生活が送れる場合もあるし、何か窮屈な、不便な生活に陥る場合もある。

また、小さい子どもさんたちはもちろんのこと、私も戦争というものを経験したことがありません。しかし国のトップが大きな失敗をすれば、他の国と戦争をするケースも出てくるでしょう。そうすれば、皆さん方のお父さんが戦争に行き、けがをしたり亡くなられたりするかもしれないし、家や家族を失ったりするかもしれない。そういった大事な決定をするのも政治です。そういう意味で、政治家というのはものすごく大切な職業なのです。

「人のために」と頑張る自分に満足する。納得してやっているから、それでいいんです。

【前原】昔は政治家になると、悪いことをしてお金もうけができると言われたりもしましたが、そういったケースはどんどん減っていると私は思います。ですから、お金持ちの手段を考えるのであれば、事業を始めて経済の方面を目指したほうがいいと思います。どうしたら一人一人の国民が幸せでより豊かな生活を送れるようになるか、戦争を回避できるのか、あるいは豊かな地球環境を残していくためには何をしたらいいのかをお金とは関係なく考えたい人は、ぜひ政治家を目指してもらいたい。私はそう思います。

――前原さんも、人や社会のために自分の人生を使おうと決意して政治家という職業を選択されたわけですが、自分の中にどういう資質があったからだと思われますか。

【前原】ざっくばらんに言うと、自分の場合、そういうふうに頑張る自分に満足するんですよ。結局は自己満足なんです。もちろん人のためを思って真剣にやっていますけれども、そんなきれいごとばかりでもなく、実はそういう自分に満足しているところもある。まあ、それで納得しているから、いいんですよ。(笑)

誰もが試行錯誤をするもの。まずは好きなことを一生懸命にやる。

前原誠司/政治家・民主党 衆議院議員

いい大学に進学して一流企業に入るという一つのモデルがなくなった今、中高生が将来なりたい夢を描きにくい時代になっていると思います。そういった不安が『13歳のハローワーク』が120万部売れた理由に結びつくのではないかと思っています。そんな中、将来像を描き切れない中学生に対して、前原さんからのメッセージをお願いいたします。

【前原】あまり過保護になってはいけないと思うんですね。我々の時代でも早くから将来何になりたいかを決めている子どももいる一方で、大学に入ってもそれが定まらない人たちもいっぱいいました。当時はバブルの時代で、どこの会社にも容易に就職はできたかもしれませんが、これという仕事に自ら望んで就いている人というのは、どの時代でもそんなに多くないのではないかと私は思うんですね。

裏返して言えば、たまたま出会った仕事が満足のいくもので、一生涯それが仕事になってもすばらしい出会いですから、それはそれでいいんだと思います。ですが、自分の好きなことを将来の仕事に結びつける、その発想を常に持っていることは大事なことです。「13歳のハローワークマップ」にもありますが、何が自分は好きなのか、何が得意なのかを常に考えておくことが必要なのかもしれません。ただ、それと実際に就く仕事が一致するとは全く限らない。

現に、私は中学、高校で一番好きな科目は数学でした。数学が得意だから理系に行こうと思ったけれども行きたい学部がなかったんですね。数学が得意だから理系に行くというのも安易だし、解いていて面白いけれども、数学を仕事にしたいとは思いませんでした。そういう意味では誰もが試行錯誤をするんだろうと思うので、まずは好きなことを一生懸命にやる。数学が好きで、難問をいろいろ解いたことがまた自分の自信にもつながっています。違う仕事に就いたとしても、そう努力をしたことが、自分の身となり血や肉になっていますので、それはそれでいいんじゃないかと思いますね。

生まれ変わったら、そうですね……今と対極の仕事で徹底的に金もうけをしてみたい。

――政治家として今の時代を生きていらっしゃる前原さんが、もう一回生まれ変わったら、どんな職業に就きたいと思われますか。

【前原】今と対極の仕事をやってみたいですね。さっき申し上げたように、政治家は金もうけに走ったら絶対失敗するので、自分に才能があるかどうかは別にして、生まれ変わったら徹底的に金もうけをしてみたい、そういう思いを持つことはあります。

ただ、今の時代には、最後は人を教えることが大事だと思います。この仕事をいつかリタイアをすることになった人生の後半では、恩師のように大学で教えるのかどういう形かは別にして、自分の志を受け継いでくれる後輩を育てる仕事に移行したいなと思っています。

――本日はどうもありがとうございました。


前原誠司/政治家・民主党 衆議院議員

私の中ではテレビで熱く議論する「前原代表」のイメージが強かったので、インタビューが始まって、淡々と語る目の前の前原さんに多少ギャップを感じました。ひょっとして「メール問題」をまだ引きずって元気が出ないでいるのかな、とも思いました。

しかし話が教育問題に移ると、ご自身なりのニート、フリーターに対する原因分析と解決策について話す姿は非常に情熱的でした。

政治家というと、どうしても“清濁併せ呑む”“豪快”“怪しげ”という先入観を持ちがちですが、前原議員にはそういった感じが全くなく、聡明で人間味あふれる新世代のリーダーという印象です。「政治家として、人や社会に尽くしている自分が好きなんです」という言葉が特に心に残りました。

私は、今の日本には、政権を担い得る力を持つ野党の存在が必要だと思っています。
40代の同世代として、政治の舞台での前原誠司議員の捲土重来を期待しています。