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著名人インタビュー この人に聞きたい!
前原誠司さん[政治家・民主党 衆議院議員]



第2章 教育という「人づくり」

教育基本法の議論も大切だが、人や教育は現場でしか変わらないと思います。

前原誠司/政治家・民主党 衆議院議員

【前原】私の知人にニートを積極的に雇用している経営者がいます。ゲームの検証を行う会社を経営しているのですが、ゲームに没頭して人と会うことが減り、結果的には引きこもってしまう人がいるので、ゲームでニートになったならゲームで社会復帰させようというわけです。そこは彼らの得意分野ですから、仕事としてある程度の対価を払い、面白いと乗ってきた人たちを正社員なりに引き上げて、しっかり雇用をしていく。その過程で「働いている」という実感を与えていくのです。さっき代田さんがおっしゃったように莫大(ばくだい)な費用を使ってどれだけのニート対策ができたのかを考えれば、むしろそういった会社にバックアップをしたほうが真水(まみず)(※)のニート対策がしっかりできる。こうして費用対効果が図られていくことのほうが必要ではないかと思います。

言い過ぎかもしれませんが、人づくりについては精神や政策を論じても変わらないという認識は持ったほうがいいと思うんですね。教育基本法に愛国心を書くかどうかの議論も大切だけれども、人や教育というのは現場、運動論でしか変わらない。

先日、杉並区の和田中学校へ視察をさせていただきました。ああいう面白い授業をして、子どもたちが関心を持ち、親御さんたちも参加をして、みんなで子どもを何とかしていこうじゃないかという成功例を広める役割が政治家として大事だと思います。ニート対策も同じです。仮に民間であっても、実質ニート対策としてうまく回っている企業については全面的にバックアップし、検証を行う中で費用対効果をしっかりとはかっていくことが必要なのではないかと私は思います。

※真水……国内総生産(GDP)を直接増やす効果のある公共事業費のこと

先進事例を見て回り、広める。伝道師の役割も、政治家として大事なことです。

――先日、杉並区立和田中の藤原和博校長先生が開催する「よのなか科」の授業を、前原さんと一緒に受講させていただきました。「よのなか科」には、どんなきっかけで行こうと思われたのですか。

【前原】教育は運動論で動かしていかなくてはいけないという確信を私は持っていまして、代表になる以前から、先駆的に取り組んでいる学校を見て回っています。ほとんどがコミュニティスクール(※)と言われるものです。和田中はコミュニティスクールではありませんが、同じように地域の皆さんを巻き込んで、初めて就任した民間企業出身の校長先生にかなりの自由な裁量を与えて成功している。我々国政を預かる人間は、それを伝道師のような役割で広めることが大事だろうと思っています。全国で面白い取り組みをしている学校のうわさを聞きつけて、自分で実際に見て、これはと思うところは講演などで必ず宣伝をしている。そういう活動をしています。

視察先に、一つだけ養護学校でのコミュニティスクールがありました。これはかなりのチャレンジなんです。健常者のみならず、障害を持った子どもさんたちも含めて教育にしっかりと目を向け、大人が子どもに対して愛情を注いでいく。単に偏差値を上げることや面白い学校を広めるだけではなく、そういった取り組みを広め、しっかりと地に足のついたものにしていかなくてはいけないなという思いがありますね。

※コミュニティスクール……
自治体が設置し、保護者や地域コミュニティが自律的、積極的にかかわりながら運営する公立学校

さまざまな問題を担うのはすべて人。基本はやはり教育にあり、人づくりにある。

【前原】政治における大事な仕事の一つは子どもの教育だと思っています。財政再建、地方分権、あるいは外交、領土問題なども大事な政治のテーマではありますが、それを担うのは全部人です。いくら国会議員がいい政策をまとめても、人がそれを担い切れなければ、ひいては国力の低下につながるわけです。すべての基本はやはり教育にある。人づくりにある。私はそう確信をしていますので、内政の柱は教育に置いていきたいと思ってやってきましたし、これからもやっていきたいと思います。

――前原さんご自身が海外で教育関係の視察をするケースは多いんですか。

【前原】まだ海外で学校現場に行ったことはありませんので、できれば世界の教育現場も視察したいと思っておりますが、まず私が関心を持っている日本の先進事例をしっかりと見て回りたいですね。