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著名人インタビュー この人に聞きたい!
笹森通彰さん[イタリアン・シェフ]



第3章 失敗もステップの一つ。長い目で見て、楽しみながらやっていく

できる限り自家製のものを提供し、仕入れる食材の素性の知れたものだけ。そのこだわりをブログで発信し、短期間で全国に知られる有名店に

――帰国してすぐに、弘前に自分のお店を構えたのですか?

【笹森】帰国する前、「一緒にやらないか」と東京や仙台から連絡をくれた方がいたんですね。その方たちのお話もうかがった上で、東京か仙台か、あるいは地元でお店を出すか考えました。結局選んだのが、地元だったんですけどね。

地元でやりながら、全国に名前を知ってもらえるお店にするのに一番手っ取り早いのは、東京である程度やって名をあげて、いよいよ地元に戻ってやりますよというパターンだと思います。そうしたら、お客さんも来てくれますし、雑誌の取材も来てくれると思うんですよ。それで、東京でいろいろ話を聞いたり、前の同僚がいるお店に行って食べたりして仕事ぶりを見たんです。すると、みんな忙しすぎて、寝る時間を削って働いているんですね。そういうやり方は自分の性に合わないので、こんな激戦区では続かないな、と思って地元を選んじゃったんです。有名になるには、時間かかるな、遠回りだなとは思ったんですが、いざフタを開けてみたら、思ったよりも短期間でここまでなれたので、逆に良かったですね。

――その理由は、どこにあるのでしょうか?

【笹森】タイミング良かったんですよ。インターネットが進化して、僕がお店を始めた2003年ごろにはブログも浸透し、誰でも気軽に情報を発信し、閲覧できるようになっていました。それ以前だと、弘前にいいお店ありますという情報が口コミで東京まで伝わるのに、5年10年かけてゆっくりゆっくり広がっていったと思うんです。今はもう、インターネットを使えば、世界中に情報を発信することができますからね。それが一番の理由じゃないでしょうか。それを分かっていたので、意識して東京のグルメの方や雑誌のライターさんがそそりそうなことを書いていましたね。

あと、今、食の自給率とか偽装問題など食に対する不安が大きく、だからこそ関心が高まってきています。その点、うちは、そういった問題から一番遠いお店だということもあって、ますます注目を浴びているんでしょうかね。それもタイミングの一つかな。

――お店のこだわりを教えてください。

笹森通彰|できる限り自家製のものを提供し、仕入れる食材の素性の知れたものだけ。そのこだわりをブログで発信し、短期間で全国に知られる有名店に

【笹森】野菜、チーズ、ハムなど、自分でできるものは何でも作ります。トマト1個を皿に盛って出しても自分の味ですから、種植えのときからお客様の笑顔を想像しながら育てています。でも、昔の人って、自分で野菜を作り、味噌も作り、何でも自分でやっていたわけなので、それは本来あるべき姿なんですよね。ですから、これをこだわりと言っていいものかどうかという気持ちが、自分の中にはあります。

あと、食べ物は体にそのまま入ってくるものなので、着る服よりも、寝る場所よりも、人間にとって一番大事だと思うんですね。だから、食材の素性は相当大事にしていて、仕入れる食材については、肉にしても野菜にしても、会うことができる近所の生産者の方から直接仕入れています。そうすれば、お客様にも安心してご説明もできますし、安心して食べてもいただけるので。そこは、非常に大事にしています。

「おいしかったです」「また来るね」「楽しい時間を過ごせました」―― そんな言葉を掛けてもらえると嬉しいですね

――働く喜びってどういうところにありますか?

【笹森】やっぱり、お客さんに「おいしかったです」「また来るね」って言ってもらえることですね。また、僕はシェフですけれど、オーナーでもあるので、お客様に直接接して、会話の邪魔をしない、会話を盛り上げる、いいワインを選ぶなど、トータルでプロデュースします。そういう意味では、料理に限らず、「楽しい時間を過ごせました」と言っていただけるのも嬉しいですね。

――今後のビジョンを教えてください

【笹森】今年は、ぶどうが病気にやられて失敗しましたが、まずワインを作ることです。将来的には、自給率100%を目指したいですね。ワインもオリーブオイルも、コショウも、なんでも。難しいんですけど、近づけていきたいと思っています。

あとは、自宅か、自宅近辺で、広い土地を耕して食材をこさえて、そのそばに、ここよりももっと広いお店を構えて、食に関して何かアピールできることをやりたいですね。

――最後に、中高生にメッセージをお願いします。

笹森通彰|「おいしかったです」「また来るね」「楽しい時間を過ごせました」―― そんな言葉を掛けてもらえると嬉しいですね

【笹森】興味があるものがあれば、何でもとりあえずチャレンジしてみることです。そうして、これで行くと決めたら、自分で目標を設定することです。人からもらった目標なんて続くわけがないですから。さらに、なりたい職種に関することを何でもやってみる。たとえば、料理人になろうと思ったら、食べれないものも食べてみる、ちょっと高い食材、高いワインなども。さっきも言いましたけど、いいものを知らないといいものに近づけないし、それを超えられないので。別に値段が高いものだけじゃなく、普段手に入らないものを食べてみるのもいいと思います。自分で畑を耕して自分で収穫するのもいいと思います。そうすれば、その野菜がどのようにしてできているとか、どう提供すればいいのかとかが、自ずとわかってきます。失敗したら失敗したで、絶対自分のためになってますからね。皿洗いでも荷物運びでも、成長するステップだと思えばつらくありません。

このように、目標を決めたら、失敗もステップの一つだと思って、長い目で見て、楽しみながらやっていくことですね。

 
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