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著名人インタビュー この人に聞きたい!
伊達公子さん[テニスプレーヤー]



第3章 子どもに夢中になるものを見つけるきっかけを与えたい

夢中になれることがあると、自信が生まれてくる

――引退後、なぜスクールを始めようと思ったんですか。

伊達公子/テニスプレーヤー<br>カモン!キッズテニスにて<伊達公子/テニスプレーヤー
カモン!キッズテニスにて>

【伊達】私は自分に向いていて、かつ好きなテニスに6歳という早い時期に出会えることができました。テニスのおかげで、夢中になれる時間が持てたし、夢中になれることがあると、成長過程が楽しかったりするので、その成長過程の中で、自信が生まれてくるんですね。自信が自分を成長させてくれる大きな要因にもなると思います。私の場合は、例えば小学校の頃、日替わりで誰かがいじめっ子になっていたんですけど、それに対してひるまない強い気持ちを持てるようになりました。私は、いじめっ子をいじめるようなタイプなんですけど、「なんでいじめんのよ」ってやっていると反対に自分がいじめられたりするけど、私が結構ひるまないので、つまらなくなるから、対象がかわる、みたいな。

テニスで、自信が生まれたおかげで、苦手な勉強に対しても、テニスで養った集中力を発揮して、どうせやらなきゃいけないならできるだけ早く済ませようとする気持ちで臨めました。

子どもに夢中になるものを見つけるきっかけを与えたい

【伊達】テニスが上達するためには、技術的な才能だけではなく、さまざまな要素が必要です。テニスは個人スポーツなので、自立心を養えますし、ボールがどこに来るかわからない、作戦を考えなきゃいけないという決断力、判断力も養えます。それが、私にはすごく大きかったと感じてきたので、夢を持てなかったり、何が自分に向いているのかもわからなかったり、何やってもすぐにあきらめてしまう子どもたちに、何か自分に夢中になれるものを見つけるきっかけを与えてあげたいなと思ったんです。

私はテニスに生きてきた人間なので、テニスを通じて、子どもたちに可能性を広げるチャンスを与えてあげることが、キッズテニスを始める大きなきっかけでした。

大人が、子どもの可能性を広げるチャンスをつくる。

――世界で活動してきていて、最初の思いと、変わってきたことはありますか。

【伊達】今は子どもを問題視することが多いし、私もそれがきっかけで、カモンキッズテニス活動を始めたんですが、何年かやっていく中で、子どもたちはすごくいきいきとしているし、前向きだし、体を動かすことが好きだし、2時間やっていると、目の色も変わってくる。子どもは私たちの頃と変わらないんじゃないかなと思うようになりました。両親や学校の先生など、周りにいる大人側に責任があるんじゃないかなと思うようになりました。私が対象にしている子どもたちは、3歳から10歳で、自分たちの意思で決断する力を持っていろということのほうが難しい年齢です。親の影響だったり、先生の影響だったり、周りの大人の影響はすごく大きいので、周囲の大人が、子どもの本来持っている可能性を広げるチャンスをつくってあげる。

子どもたちは、放っておくと自分で考えるようになる

伊達公子/テニスプレーヤー

【伊達】子どもたちも、与えられた時間の中で、自分で悩んで自分で解決策を考える力を持っているんだと自信を持てようになります。今の子どもたちは、親が過保護過ぎる部分があるので、子どもたちが考える時間というのがないんだと思います。でも、ある程度放っておくと、子どもたちは自分で考えるようになります。

今はゲームがあって、ゲームのマニュアルもあるし、そのとおりにすればうまくなれる。そういう準備が全部整っているから、考えなきゃいけないという発想も子どもたちの中には生まれない。でも、マニュアルがなければ、子どもたちは「どうやったら遊べるのかな」と考え始めます。親御さんが周りから見ていて、子どもたちは自然に友達をつくろうとするし、その中で溶け込もうとするし、一緒になって、ボールを一緒に拾おうという気持ちも生まれてくるし、「どうやって、じゃ、ボールがうまく打てるのかな」って考えるんだなっていうことを、気づいてくれる方が、多いんじゃないかなと思います。だから言葉がそれほどなくても、伝わっていくんじゃないかなと思います。

夢を実現しようと思ったら、必ず責任がついてくる。

――最後に、将来を考えている中高生にメッセージをお願いします。

【伊達】まずは、いろんなことに興味を持ってほしい。私は「頑張る」という言葉はあまり好きじゃないけれど、でも、頑張らなきゃいけないときっていうのは必ずあると思うんですよ。夢を実現しようと思ったら、必ず責任というものがついてくるし、責任を伴って初めて夢を実現できたときの喜びは、とても大きなものだと思います。成功しないと思った途端にあきらめて背中を向けてしまうのではなくて、失敗しても自分の夢に向かって突き進んでみる。その上で、本当に違うと思ったら方向転換したらいいんじゃないかな。方向転換することと逃げることを一緒にしないことが大事だと思います。

 
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