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著名人インタビュー この人に聞きたい!
伊達公子さん[テニスプレーヤー]



第2章 運をつかみとるためには自分自身に妥協しないこと。

トップ選手の要素は、技術的な才能だけじゃない。

――プロになり、最終的には何千何万というプロ選手がいる中で世界のトップ4になりましたね。そこまで登りつめる人と、そうでない人の違いって何でしょう?

伊達公子/テニスプレーヤー

【伊達】多くのプロの姿や私自身の経験を踏まえて言うと、登りつめる人は当然才能を持っていると思うんですね。ただ、才能にもほんとうにいろんな才能があって、技術的な才能だけでは勝負の世界では勝てないと思います。テニスの場合、年間の3分の2はツアーですから、丈夫な体や気力も大事な要素です。技術、体力、メンタルは当然のことですし、その3つのバランスも大事。さらにそこに、運をつかみとる力を持つこともトップの要素だと思いますね。それから、自分自身に妥協しないことも大事じゃないかな。

トップ選手の勝ちに対する執念は並外れている

――トップクラスに行けば行くほど、その妥協のレベルが違う?

【伊達】負けず嫌いっていうことに似ているかもしれません。アトランタオリンピックの準々決勝で対戦したアランチャ・サンチェスという選手がいるんですけど、お互いにけいれんし始めるほどの長い試合になったんです。結局私が負けちゃったんですが、試合後のロッカールームで着替えているときに、「大変な試合だったね。アランチャもけいれんし始めていたでしょ」と話しかけたら、「私はしてないわよ。もっと続けられたわ」と言われたんです。試合が終わっても勝負にこだわるその姿から、「あ、ここまでやらなきゃいけないのか」と。トップの選手を見ていると、勝ちに対する執念は並外れたものがあります。極端な話ですが、食事のコントロールはもちろん、空気を吸うことも勝つために、みたいな。トップ10に入る選手の姿勢は、とにかく全然違います。

極限を超えたときに、運が流れてくる

――運についてはどうですか。

【伊達】伸びるときっていうのは、自分の調子もいい、体調もいい、試合の組み合わせもいいというように、すべてがうまく流れてくるように感じますね。そして、そういう運が流れてくるのは、自分の極限を超えたときじゃないかなと思うんです。

――極限を超えたとき、運が流れてくるものだと。

伊達公子/テニスプレーヤー

【伊達】自分に妥協していると、小さな運は流れてきても、ほんとうに大きな運は流れてこないものだと感じます。試合中、自分を追い込んで、追い込んで、追い込んで動いていると、無の境地に入るんです。すると、狙った以上に鋭いところへボールが行ったり、どんなに練習してもできなかったことができたりする。それは、自分を追い込んで、極限を超えた時に生まれてくる運なんじゃないかな、と感じますね。

――運を逃さないために、何か心がけていることはありますか。

【伊達】神経を研ぎ澄ませていること、でしょうか。「運」というのは、ほんとうに一瞬にして、過ぎ去ってしまうものだし、見落としやすいものでもあります。テニスをやっていたら、ボールや空気、周りの観客の雰囲気から、自分の流れになりやすいように、自分で仕向けるということもちろん大切。その中で神経を研ぎ澄ませていると、「運」をつかみやすくなるんじゃないかなと思います。

――なるほど。ぼーっとしていちゃ、だめだということですね。

【伊達】だめですね(笑)。