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著名人インタビュー この人に聞きたい!
佐藤可士和さん[アートディレクター]



第3章 好きなことっていうのは人には与えてもらえない

自分も想像がつかないようなことをやっていたい

――佐藤さん自身の今後の夢をお聞かせいただきたいんですが。

佐藤可士和/アートディレクター

【佐藤】夢はですね、何年後でもいいんですけど、自分も想像がつかないようなことをやっていたいんですよね。今想像できるものって、想像の範疇だから、そんなにびっくりしないことなんですよ。自分でもびっくりしちゃうようなことをやっているのが夢なんです。だから別にゴールとかはないんですよね。ゴールはないというか、目標とか、ゴールみたいなのがあると、そこをクリアしちゃうと終わりになっちゃうじゃないですか。だから、そこはなくて、新しいものが見たいんですよ。自分でも。それがやっぱり一番楽しいことだと思うんです。新しいことに触れるっていうのは。だから、自分でも面白くしたいから、新しいものをつくろうと思って一生懸命努力しているんですけど、だから、全く今とはもう、想像もつかないようなことをやっているのが夢なんですよね。うん。

好きなことっていうのは人には与えてもらえない

――中学生や高校生、これから職業を目指す子どもたちにメッセージをお願いします。

【佐藤】ほんとうに自分が好きなことっていうのを見つけるということに尽きます。自分が何が好きなのかっていうのを理解するって、すごい難しいことだと思うんですよね。かなり真剣に探らないと、好きなものに出会えないと思うんですよ。好きなことっていうのは人には与えてもらえないので、自分から探しに行かないと見つからないと思うんですよ。だから、ちょっとでも興味があったら、それをほんとうに一生懸命やれるところまでやるといいと思います。 それがそのまま仕事にならなくても、必ずいい答えは待っています。

佐藤可士和/アートディレクター

例えば、僕の場合は、大学生のとき、一番一生懸命やっていたのって実はバンドだったんですよ。バンドでギターをずっと弾いて、作曲していたんですね。すっごい熱中して、曲をつくったり、バンドをプロデュースしてライブをやったりと、ものすごい一生懸命やっていたんですよ。だけど、結果的に、「おれは音楽は向いてない」ということがわかったんですよ。1日20時間ぐらいギター弾いたりとかするぐらい、ギターもうまくなりたかったし、かっこいい曲もつくりたかったし。でも、それだけやって、僕は、「一番やっぱりおれに向いているのは、絵だったんだ」ということがわかったんですよ。それはなんでかっていうと、音楽は憧れていたことだったんですよ。憧れてたことと好きなことっていうのは違ったんですよ。憧れと好きは違う。だから音楽は憧れていたことで、絵は、空気を吸うように絵が描けちゃうんで、憧れもないんですよ。だけど、実は自分にとって、音楽をやってて面白かったのは、作曲していることが面白かったの。ものをつくることがやっぱりほんとうに好きだったなっていうことがわかって。でも、音楽を通して、「あ、これ、絵と一緒じゃん」と思った瞬間があったんですよ。そこから、実は「あ、おれ結構何でもできるかもな」と思ったんですよ。

それが今の僕のこの活動のベースになってて、空間でも、映像でも、何でも絵を描くようにつくればいいんじゃんと思ったんですよね。だからそういう意味で、僕はミュージシャンにはならなかったんですけど、飯も食わずにギターを弾いて曲をつくったことで、自分のクリエイションのベースはつかんだんですよね。パンクバンドをやっていたんですけど、激しくやっても激しくならなかったりするんですよ(笑)。すっごい冷静に、静かなところがあって、バン!とやると、すごい過激な感じになったりするんですよ。ものすごく冷静につくらないと、激しさは伝わらないんだなっていうことがわかったりして、ものをつくるという、表現することはつかんで、音楽を突き詰めてやったことで、絵を描いたりすることに対しても、直結してて、すごくインパクトのあるものをつくろうと思うと、すごい冷静な設計が必要だったりとか、なんか、わーっとやればいいというものじゃないというか。そうなんですよね。だから、すごいよかったんですけど。うん。

――わかりました。どうもありがとうございました。

【佐藤】はい。ありがとうございました。

 
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