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著名人インタビュー この人に聞きたい!
佐藤可士和さん[アートディレクター]
[INDEX]
- 第1章 「何やってもいいんだよ」という場を与えてくれた
- 第2章 楽しいことであふれているように自分の仕事もデザインしている
- 第3章 好きなことっていうのは人には与えてもらえない
●第2章 楽しいことであふれているように自分の仕事もデザインしている
向き合い方を変えたら、結果的には全部うまくいった
――アートディレクターの仕事を始めて、転換点になったのはどんなお仕事でしたか?
【佐藤】5年目ぐらいで、ステップワゴンの仕事をしたときですね。それまでは、「僕の作品だ」と思うぐらい、熱を入れてやっていたんですよ。あまりにも入り込み過ぎて、本質が見えてなかったんですね。
その仕事は博報堂にとっては重要な仕事だったんですけど、若いデザイナーにとっては、ヘビーな、やりたくない感じの仕事だったんですね。車の仕事っていうのは、ビジネス的に大きくて、責任も大きいから、大人数がかかわるし、マル秘も多いし、撮影とかも大変だし、「うわ、来た!」みたいな感じなんですよ(笑)。「メインの仕事だから、とても俺の思うとおりにはならないだろうな」と思って、いい意味で開き直ったんですよ。冷静になると、「よくよく考えたら、おれの作品じゃないしな」と思ったんですよ。今までも一生懸命仕事はしていたんですけど、クライアントよりも自分の仕事のほうが好きになっちゃうぐらい熱を入れてやっていたんです。1回スーッとクールダウンしたら、「本当に車のためにいいと思うようなことに向き合ってみよう」と思ったんですよ。向き合い方を変えたら、結果的には全部うまくいったんですよ。想像もしなかったような非常にユニークな表現ができて、なおかつ、車も非常に売れたんですよ。もう大成功。短期間でNO.1ブランドになって、コマーシャルも評判になって、ずっと欲しいと思っていたADC賞もぽんととれたんですよ。ちゃんと向き合えば、結果はついてくるんだっていうことがそこで理解できました。感覚としては、自転車に乗れるようになった感じです。1回乗れるようになると、5年ぐらい乗っていなくても乗れるっていうのと一緒で、「あ、おれ、もう乗れる」と思ったんですよ。いい意味でエゴを捨てるとか、俯瞰する視点が持てるというか。
楽しいことであふれているように自分の仕事もデザインしている
――今の佐藤さんの立場のアートディレクターの中で、つらいことってどんなことなんですか。
【佐藤】うーん、つらいことってないですよ、そんなに。物理的に忙しくて疲れたなとかはありますけど。つらくないようにしているんですよね。楽しいことであふれているように自分の仕事もデザインしているっていうか。そこも仕事の一つなんですよね。
僕、もともと楽しいことは寝ないでもできるんですよ。興味が持てないことは、全然できないんですよ。ほんとうにその差が激しい性格なので、いかに自分が楽しいかっていう状況をつくることが重要なんですよね。だから、今、つらいこと、あんまりないです。
――佐藤さんが、常々意識しているということはありますか。
【佐藤】うーん、そうですねえ。自分が面白いと思えるようなものを探しています。常に自分のやる気が出るように、その仕事の中でも、細かいことから大きいことまで探しています。社会的なことから、「今日、楽しくやろう」というような日常的なことまで、何でも面白くやれるようにする努力はしているかもしれません。面白ければ一生懸命やれるんですよ。例えば人との関係でも、自分が気持ちよく仕事するために、なるべくみんなが気持ちいいような仕事にできるよう、すごく気を使ったりしています。
どうせだったらたくさんの人にいいと思ってもらいたい
――逆に、この仕事をやって、仕事冥利に尽きるなというのはどういう感覚ですか。
【佐藤】「人の役に立った」っていうことが実感できたときに、クリエイター冥利に尽きるんだと思うんですよね。人の役に立ったというのは、いろんなレベルがあって、クライアントが喜んでくれたというのだってうれしいし、商品が売れたとか、今まで知られていなかったことがたくさんの人に知ってもらったとか、というのも、そのクリエイションが役に立っているということなので、うれしいですよね。それから、消費者からも評価されるというのは、「役に立った」ということだと思うんですよね。自分のクリエイティブが、役立ったのかって思うと、やってよかったなと思いますね。うん。
――自分がいいものをつくったというよりは、人が喜んでくれたということが喜びなんですね。
【佐藤】そうですね。デザインの仕事は、社会をキャンバスにしているので、1対1とかじゃなくて、1対多じゃないですか。もともとそういうのが好きなんですね、きっと。どうせだったらたくさんの人にいいと思ってもらいたいとか、たくさんの人に喜んでもらいたいっていうのがあって、自分だけいいとかだと、寂しいんですよね。なんか面白くない。うん。
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