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中・高校生に送る 業界特集 『いま、これから、注目したいこの業界!』

第4弾 「“キレイ”をつくるプロフェッショナル―美容業界での働き方」

「キレイになりたい!」
かつては女性のものだった願いが、今や性別や年齢を超えたテーマになっています。みなさんの中にも、キレイになるために日々努力している人が多いのでは? 髪、顔、からだ、そして心。人を美しくする仕事には、どんな職業があるのでしょう。今回は特に美容師、理容師にスポットをあて、美容業界の仕事について紹介します。

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容姿を“美しくする”美容師、 “整える”理容師
美容業界にはさまざまな仕事がありますが、みなさんにとってもっとも身近な職業は「美容師」と「理容師」ではないでしょうか。どちらも髪をケアするプロですが、その違いってわかりますか?
日本には美容法、理容法という法律があり、「美容とは、パーマネント・ウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすることをいう(美容師法第2条)」「理容とは、頭髪の刈込、顔そり等の方法により、容姿を整えることをいう(理容師法第1条の2)」というように定められています。
でも、最近では両者の区別があやふやになってきました。より多くのお客さんのニーズに応えるため、美容師の得意技術であるカラーリングを理容師が提供したり、美容院でも軽い顔そりを行うなど、お互いの仕事の領域に進出する動きが出てきています。

美容師・理容師になるためのステップ
美容師や理容師になるには、厚生労働大臣指定の美容師・理容師養成施設(専門学校)を卒業後、国家資格を取得することが必須条件です。
専門学校には昼間課程の他、夜間課程や通信課程がありますから、それぞれの事情に合った方法でステップを選ぶことができます。

美容師・理容師になるためのステップ

華やかなイメージだけど仕事はハード
国家資格を取得したら、いよいよ就職です。ここでは美容師の例を見ていきましょう。
まずはアシスタントからスタートし、指導にあたる先輩美容師のもとで仕事を覚えていきます。勤務先の美容院によって異なりますが、パーマやカラーリングの手伝い、シャンプーなどが主な仕事。サロンの掃除やお客さんからの電話応対、タオルの洗濯といった雑用もたくさんあります。閉店後は一日の反省会やカットの練習などが夜遅くまで続きます。
その後、技術テストや審査をパスし、ようやくスタイリストとしてデビュー。一人前の美容師として認められてからも、最新技術を習得したり、感性を磨いたりと、練習と研究の日々を送るといいます。このように見習い期間を経て一人前になるという流れは、理容師も同じです。

美容師と理容師、どちらも気力体力が勝負のハードな仕事です。1対1でお客さんと接する時間が長いので、技術やセンスだけでなくコミュニケーションなど幅広い能力が求められます。でもその分、仕事の充実感や達成感も高いといいます。
やりがいがあり、腕と感性で勝負できる―そんな美容師・理容師は人気の高い職種です。とくに1999年にはカリスマ美容師ブーム(注)の影響で志願者数は急増しました。
ブームのときは多くの美容師・理容師志望者がカリスマを目指していましたが、最近では自分の将来なりたい姿に合わせた道を選ぶ人が増えています。
流行の発信地となる都心の店で最先端技術をモノにするか、地域密着型のアットホームなサロンで働くか、思い描く美容師・理容師像は人それぞれ。世界で腕を磨くため、ロンドンやパリなどに美容師留学する人もいます。

注)カリスマ美容師ブーム…各サロン選り抜きの美容師が、その腕を競い合うテレビ番組『シザーズリーグ』が火付け役となって起きたブーム。高度な技術とセンスをもった美容師たちは「カリスマ美容師」と呼ばれ、一躍脚光を浴びた。

【全国の美容院・理容院の施設数】 平成16年度保健・衛生行政業務報告「生活衛生関係施設数の年次推移」
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美容師が働く場所―美容室は、お客さんがおしゃれとリラックスを満喫できる場所。そして、ヘアスタイルを変えることで新しい自分を発見できる場所です。
みなさんも、あこがれのアーティストと同じスタイルをリクエストしたり、今まで試したことのない髪型に挑戦して、ドキドキわくわくした経験があるのでは? 
美容師の仕事はヘアスタイルを整えることだけではありません。お客さんの心の中から「もっとキレイになりたい」という気持ちを引き出すこともプロの腕の見せ所だといいます。
また、美容院では髪に関することだけでなく、メイクネイルケア和服の着付けなど、総合的な美のサービスも提供しています。お客さんが「今日はいちばんキレイな自分を見せたい」と思う、成人式やパーティーなどの機会にサービスを提供することで、その思い出づくりをお手伝いしているのです。

そして、その仕事場もサロンだけにとどまりません。他にどんなところで活躍しているのか、そこで一緒に“キレイ”をつくる仕事、同じ現場で関わりのある職業を見てみましょう。

業界の枠を越えて広がる“美容師の活躍の場” ネイルアーティスト ファッションモデル スタイリスト カメラマン 着物コンサルタント・着付師 美容師 (ヘア&メイクアップアーティスト) メイクアップアーティスト ネイルアーティスト エステティシャン ブライダルコーディネーター 着物コンサルタント・着付師 ファッションデザイナー ファッションモデル メイクアップアーティスト ネイルアーティスト 着物コンサルタント・着付師 リフレクソロジスト

美容師と美容業界のプロたちはさまざまな業界で活躍しています。
それぞれの現場ではカメラマンやデザイナーなど、いろいろな職業の人たちと関わりあいながら仕事を進めていきます。
雑誌のグラビアやテレビCMなどに登場するモデル・タレントたちの美しさ、また結婚式での花嫁さんの晴れ姿は、 “キレイ”をつくるプロたちによって魅力を引き出されているんですね。

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“キレイ”をつくる―美容業界の役割ですが、時代と共に求められる要素も広がりを見せています。今後の業界動向や注目の職業を紹介していきましょう。

お客さんのニーズに合わせて多様化する美容院・理容院
「一流の腕とセンスをもつ美容師に、今いちばんおしゃれなスタイルをつくってほしい」
「地元の理容室で散髪してもらいながら、のんびりとした時間を過ごしたい」
「料金が安く、スピーディーに仕上げてくれる店がいい!」
お客さんが美容室・理容室に求める要素は多様化しています。こうしたニーズに応えるため、それぞれの得意分野をアピールした個性的なサロンが次々誕生しています。
また、癒しのひとときを求めて来店する人も増えているため、頭皮マッサージやフェイシャルエステなどのリラクゼーションメニューに力を入れる店も増えています。
さらに、お客さんの健康にも配慮した美容室も登場。環境にやさしく、髪や頭皮へのダメージが少ないパーマ液やカラーリング剤だけを使うため、安心してまかせられるとお客さんから好評だといいます。

“キレイ”と一緒に「癒し」も提供
人の心とからだは密接に結びついていますから、外見をいくら磨きあげても、心の中がどんよりと曇っていれば美しさは輝きません。心とからだを一緒にケアすることは、美容院、理容院に限らず美容業界全体のテーマとなっています。
そんななかで人気を集めているのが「リフレクソロジスト」や「エステティシャン」、「アロマセラピスト」です。
美のプロたちに髪や肌、からだの手入れをしてもらいながら、ホッとくつろげるサロンは、お疲れ気味の現代人の駆け込み寺となっています。

「福祉」に役立つ美容の仕事
美容業界の仕事は福祉業界でも注目されています。認知症(注)で入院していたおばあさんに、プロのメイクアップアーティストがお化粧をしてあげたら、ずっと無表情だった顔に笑顔が戻ったとか。
キレイになりたいという願いは、健康な人たちだけのものではない。そんな考えを原点に、障害者や寝たきりの高齢者など、美容室に通いたくてもあきらめていた人たちのためのサービスが登場しています。
ホームヘルパーと理・美容師の資格を併せ持ち、福祉施設や高齢者のお宅に訪問して、理髪サービスを提供する職業「理美容福祉士」や、美容師・理容師向けの介護講座などがそう。
また、事故や病気で顔に傷を負った人にメイクをほどこし、チャームポイントを引き立てて心やからだを元気にする「フェイシャルセラピスト」という職業も注目されています。

注)認知症…脳の障害によって起こる病気。以前は「痴呆症」と呼ばれていたが、新たにこの名称が提案された。病状が進行するにつれ、判断力の低下などが起こる。

誰でもキレイになると、ウキウキと気持ちが華やぎます。気持ちが沈んでいたのに、おしゃれをしたら突然元気がわいてきた! という経験がみなさんにもありませんか?
人の心やからだも元気にする“キレイ”の力。その奥深さはますます注目され、美容業界の仕事も今後さらなる広がりを見せるのでしょう。
外面を飾るという点ばかりが注目されがちな美容業界の仕事ですが、単なる“キレイ”を提供するというよりも「人を幸せにする仕事」と呼んだほうがふさわしいかもしれませんね。
誰かをキレイにしたい人、自分がキレイになりたい人、そして誰かを幸せにすることで自分も喜びを感じられる人
―美容業界の仕事はそんな人たちにぴったりの職業だと思います。

≪参考文献≫
『美容師・美容業界をめざす人の本』成美堂出版・刊
財団法人 理容師美容師試験研修センターHP
社団法人 日本理容美容教育センター

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