HOME > 特集記事 > 中・高校生に送る 業界特集 > 「おいしい仕事、教えます―料理業界での働き方」

料理業界には料理を作る仕事だけでなく、食の楽しさを伝えたり、正しい食生活を指導したりと、いろいろな仕事があります。料理を作るのが苦手でも、食べることが大好きだったり、おいしいお店情報に敏感だったりすれば、料理業界で活躍できるチャンスが!
おいしくて奥が深い仕事、料理業界の職業について紹介します。
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家の食卓で、レストランのテーブルで、ズラリと並んだおいしそうなメニューの数々。「いただきま~す!」と今まさに口に運ぼうとしたそのひとくちが、どんなルートを通ってあなたのもとへ届くか、考えたことはありますか?
私たちが毎日、当たり前のようにとっている食事。そのウラでどんな人たちが働いているのか見てみましょう。



料理や食品を作る職業、食に関する情報を伝える職業、正しい食生活を指導する職業――料理業界では、こんなにも多くの仕事、そしてそれに関わる人たちが活躍しています。
「そんなの知ってたわ」という人、「料理を作ることだけが料理業界の仕事じゃないんだ!」と驚いた人、いろいろでしょう。
料理業界の仕事なくして私たちの毎日の食事は成り立ちません。そして、料理業界の仕事は私たちの食生活を豊かにする役割も担っているのです。
今回は“料理を作る”“おいしさや食の情報を伝える”“正しい食生活を指導する”仕事にスポットをあてて紹介します。
料理人とシェフの違いって?
料理業界の職業はいろいろありますが、中でもおなじみなのは料理人やシェフなどの料理を作る仕事でしょう。
ところで、皆さんは料理人とシェフの違いって知っていますか。どちらも料理を作る仕事だとわかっていても、きちんと説明できる人は少ないのでは?
料理人とは、コックさんや板前さんなど、料理を作ることを職業にしている人のことをいいます。そして、シェフはフレンチやイタリアンなどの西洋料理をつくる料理長のこと。厨房(調理場)で働くコックさんたちのリーダーですね。
料理人やシェフになるには、レストラン・料理店などで修業するほか、調理専門学校で基本を身につけるという方法もあります。就職のための必須資格はありませんが、国家資格の調理師免許をとっておくと有利。厚生労働大臣指定の専門学校で調理や栄養、衛生などの必要知識を1年以上勉強すれば、調理師免許を取得できます。(*1)
料理を提供することは、人の口に入るものを作るということ。だからこそ高いプロ意識と多彩な技術・技能が求められます。それには現場で実力と経験を身につけることが必要。見習いからスタートし長い下積みを経て、ようやく一人前の料理人やシェフになれるのです。
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(*1) 調理師免許取得については、2年以上飲食店、給食施設などで調理業務の仕事を担当してから、都道府県知事が実施する調理師試験に合格するという方法もあります。
“料理を作る”+“食の情報を伝える”=“食を演出する仕事”
次に、料理を “作る”こととあわせて、そのおいしさや食に関する新しい情報を“伝える”という二つの役割をもつ職業を紹介していきましょう。
たとえば、新しいメニューを考案したり、料理のアドバイスをする料理研究家。
メニューの考案から調理、食器やテーブル周りの小物のセッティングなど、料理をおいしそうに見せるための演出をするフードスタイリストや、雑誌や広告写真で使う料理のスタイリングをはじめ、料理教室やレストランのプロデュースまで、食に関するビジネスを幅広く手がけるフードコーディネーターという職業もあります。
時代の動きや流行に敏感にアンテナをはりめぐらせ、新しい食の楽しみ方を提案する――食の演出家ともいえる仕事です。
食の楽しみを提供する仕事が多いのはなぜ?
ところで、食の楽しさを提供する仕事はどうしてこれほどまでに多いのでしょう。それには日本の豊かな食事情が関係しています。
いきなりですが質問です。皆さんは昨日、何を食べましたか?
「朝は納豆にごはんでしょ、昼はハンバーガー、夜はパスタとサラダを食べたかな」
いつも何気なーく食べているものばかりですが、それぞれのメニューの出身国を並べてみると、朝は日本、昼はアメリカ、夜はイタリアと、食の世界めぐりをしていることに気づきませんか?
街に出てみても、和食屋、フレンチレストラン、エスニック料理店にファストフード、ラーメン屋台と、さまざまな国やジャンルの飲食店があふれています。コンビニやスーパーマーケットをのぞいてみれば、お弁当やお惣菜がズラリと並んでいます。
そう、私たち日本人は食べることが大好きな民族なんです。そして日本では、不景気とはいえモノがあふれる豊かな時代が続いています。
だからこそ食に関する文化が発展し、外食・中食(*2)産業も発展してきました。おいしい情報を求める人たちが多いからこそ、食の楽しさを提供する仕事はさらなる広がりを見せているのです。






(*2)外食・中食…外食は飲食店で食事をすること、中食はお弁当やお惣菜などをお店で購入し、家に持ち帰って食べることをいいます。ちなみに家で作って食べる食事は「内食」といいます。
食べることが大好きな人、大歓迎!業界での活躍の場はいろいろ
料理業界には料理や食品を作らない仕事もいろいろあります。
キーワードは“食の情報を伝える仕事”。雑誌のグラビアなどでおいしそうな料理が紹介されているのを見たことがあるでしょう。そのウラでは、料理関係の書籍・レシピ本を作るフードエディターや、食関連の記事に関わるを取材・執筆するフードライター、料理の写真を撮影するフードカメラマンなどが活躍しています。
「作るのはちょっと苦手。でも食べることは大好き!」という人なら、食の情報を伝えるこんな仕事がおすすめです。実際、料理業界で働くプロの中には、「食べることが大好きだから」「料理や食の世界に興味がある」といった理由で就職した人たちがたくさんいます。

食をとりまく問題と、それに関わる仕事
食べることに興味津々な私たち日本人ですが、理想的な食生活を送っている人は少ないといわれています。
「最近、コンビニ弁当ばかり食べてるな」「ダイエット中だから、食事は栄養補助食品ですませちゃう」「ギリギリまで寝てるので、朝ごはんを食べる時間がない」などなど、皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか。
そんな現代人たちに正しい食生活のあり方をアドバイスするのが、栄養士や管理栄養士です。
“食べることは命をつなぐこと”という食の基本を見直そうという消費者が増え、その役割に期待が高まっています。
“食育”と“スローフード”
理想的な食生活を送る上で、最近、注目されているのが “食育”と“スローフード”です。皆さんも耳にしたことがあるのではないでしょうか。
スローフードは1986年にイタリアの小さな町で始まった運動で、郷土料理や質の高い食品を守ることを目的としています。
スローフードとはファストフードに対して作られた言葉。スピード社会では「ハンバーガーにポテトね」と頼めばパッと出てくる迅速さ手軽さが、これまで最優先されていましたが、「じっくりゆっくりいいものを守っていくことも大切だよね」という考え方が世界的に見直されてきたのです。
日本でも “食育”が注目されています。食育とは、子どもたちが健全な食生活を送れる人になれるよう、食に関する知識や判断力を身につけさせる教育のことです。
テレビや雑誌、広告で「○○という食べ物は健康にいい」「○○を食べたら病気が治った」などと紹介されているのを見たことがあるでしょう。食に関する情報の中には役立つものもある反面、全部が全部、正しいとは限りません。見たこと聞いたことをそのまま鵜呑(うの)みにしてしまうのは、実は危険なことなんです。
食育には、自分の食べるものは他人まかせにせず、自分で判断できる人になってほしいという願いがこめられています。
新たな食の楽しみ方が脚光を浴びる一方で、このように食の原点に立ち返ろうという動きも注目され、栄養士やフードコーディネーターの活躍の場が増えています。
ますます広がりを見せる食の仕事
食育やスローフード以外にも、時代の流れとともに新しいニーズが次々と生まれて、新たなフードビジネスも登場しています。
健康志向を受けた自然食レストランや薬膳料理店(*3)も増えていますし、高齢化社会を受けて一人暮らしのお年寄りに食事を届ける配食サービスなども注目されています。インターネットでしか注文できないパン屋さんなんて、10年前には想像できなかったビジネスでしょう。
あなたが社会人となる頃には、料理業界はさらなる広がりを見せ、聞いたことのない職業が登場しているかもしれませんね。
(*3)自然食レストランや薬膳料理店…自然食とは、保存料などの食品添加物を用いずに、無農薬有機栽培の素材で作る料理のこと。薬膳料理とは中国で生まれた健康料理。医食同源のもと、自然の食材と生薬を組み合わせた健康食のこと。
食べることは私たちのからだを作り、心を育てる上で大きな役割を果たしています。
あなたのもっとも身近な料理人といえば、毎日キッチンに立ってくれるお母さん。日々の食事を通して、あなたたちの心と体は自然とはぐくまれていくのです。
生きる基本にかかわる仕事だからこそ、料理業界の職業は奥が深く働きがいもあります。「料理に興味がある」「食べることが大好き」、そんな理由がきっかけで業界に飛び込み、活躍しているプロはたくさんいます。今回ご紹介した仕事が、あなたの“好きなこと”や“得意分野”のアンテナにビビッと反応したら、将来の仕事選びの選択肢に加えてみてくださいね。
≪参考文献≫
『料理・栄養・食品の仕事をめざす本』成美堂出版・刊
中・高校生に送る「業界特集」
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