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特別対談―編集長・代田の退任及び校長就任にあたって


村上龍氏インタビュー:特別対談―編集長・代田の退任及び校長就任にあたって 第2章
村上龍:とりあえずやってみないと、成功か失敗かわからない。

「13歳のハローワーク」の著書で、テレビやインターネットなどのメディアでも世の中に対してつねに興味深い情報を発信している作家の村上龍さん。また、2005年に公式サイトを開設以来、温かい目で見守っていただくとともに、さまざまなご意見をいただいています。今回、編集長・代田の退任および中学校長就任にあたり、特別対談を行いました。

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第2章 「とりあえずやってみないと、成功か失敗かわからない。」

「13歳のハローワーク」をつくったのは、強い側から弱い側へアンフェアなことに対する怒りから

【代田(編集長)】 この4月から、私は中学校の校長に就任し、「13歳のハローワーク公式サイト」の編集長を退任させていただきます。この仕事をしていなかったら、中学校の校長をやらないかという話もなかったと思いますし、自分も受けなかったと思うんですよ。その意味でいうと、龍さんとこの仕事ができたことにすごく感謝しています。また、人生のターニングポイントになったと思っています。本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

【村上龍氏】 よろしくお願いします。

【代田(編集長)】 さて、「13歳のハローワーク」を出版して5年ですけれども、龍さんの中で「子どもたちのキャリアを考える」という思いに何か変化はありますか。

【村上龍氏】 僕が「13歳のハローワーク」をつくったのは、強い側から弱い側への嘘とか、アンフェアなことに対する怒りがあったからです。非公正で、真実じゃないアナウンスメントというのは、よくないと思うんですよね。フェアな社会というのを目指すべきなので。
子どものことを考えたときにね、「勉強しなさい、勉強しなさい」って親も教師もたぶん言う。今も言っているでしょうけど、そのパラダイムが、ひょっとしたら高度成長のときと同じじゃないかと思ったんですよ。それは、子どもにとってフェアじゃない。教育というのは、子どもが大人になってから生きていけるようなすべを身につければいいわけですよね。いい学校に行って、いい大学へ行って、いい会社に入れば、それであなたの人生は安定するというアナウンスメントはもう嘘なんですよ。どちらかといえば、今でも有利ですけど、それで安定するというのは大嘘なんですよね。そういったことを今でも平気でやっているような気がして、フェアな情報を与えられないかなと思ってつくったんです。
要するに、大人側とか社会の側から、子どもとか若い人とか、あるいはニートとかフリーターとか引きこもりとか、そういう弱い人たちに向けて、アンフェアなことがなされているのがすごく我慢できないんですよね。子どもとか中学生に興味があるわけではなくて、情報がどこへどういうふうに行っているかということに興味があるんです。そこで、その情報の中のある一つにアンフェアなことがあったら、それはおかしいと怒りを覚えるんです。

【代田(編集長)】 現在、「13歳のハローワーク」は130万部売れており、非常に影響力を持ちましたが、アンフェアな状況がフェアになってきたという実感はありますか?

【村上龍氏】 アンフェアなアナウンスメントは、やはりありますよね。それは変えられないんですよ。メディアも、教育も、高度成長のころのパラダイムでずっとやっているから変わらないです。でも、僕からダイレクトに子どもにアンフェアではない情報を与えることはできるんですよ。小説に関してもそれしか考えていないです。小説には、社会を変える力はないですが、読んだ人の考え方にインプルーブできるんですよね。

どんな分野にしろ、試行錯誤することが大事

【代田(編集長)】 ちょっと話題を変えて、杉並区和田中学校で、私塾と組んで公立学校の中で、私塾を入れてひとこま500円でやろうという試みに対して、僕自身はフェアだなと思ったんですよね。私立の学校や、塾に行けない子たちが、公立へ来て、安いお金で学校で対応できる。ただ、これに関しては賛否両論あります。

【村上龍氏】 個人的には、賛成でも反対でもないんですけど、やることはやったほうがいいと思うんですよ。どんな分野にしろ、試行錯誤というのが大事なんで、そこで「そんなもんはだめ」と言っちゃうと、それが失敗か成功かわからないですから、とりあえずやったほうがいいと思うんですね。やったほうがいいということは賛成なのかもしれないですけど。

【代田(編集長)】 具体的には、東京都の教員組合や住民から差止請求が来ているんですけど、反対勢力があるのは、致し方ないととらえるしかないですか。

【村上龍氏】 そういう人もいると思いますよ。それこそ「教育が平等じゃない」とかいう声も上がるだろうし。反対する人の気持ちもわかります。だから、やってみればいいと思うんですよ。論議も巻き起こるし、いろいろなことを考えるきっかけになりますからね。

【代田(編集長)】 どうもありがとうございました。

 
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