HOME > 特集記事 > 中・高校生に送る 業界特集 > 「“音楽”を仕事にしたい人に―音楽業界での働き方」
落ちこんでる時やさびしい時、なぐさめてくれたり楽しい気分にさせてくれる“音楽”。
皆さんの中には、自分の想いを歌にのせてアピールしたいとバンド活動をしている人、いつでも好きな曲を聴いていたいからiPodを手放せない人、そして、そんな毎日を送ることで音楽がかけがえのないものとなり、将来、音楽関係の仕事に就きたいと希望している人もいるでしょう。
そこで今回は音楽業界にスポットをあてました。音楽にまつわる仕事はどんなものがあり、業界はどのように成り立っているのか―そのしくみを紹介します。
“音楽業界の仕事”というと、皆さんはどんな職業を思いうかべますか?
多分、ほとんどの人が「アーティスト」「ミュージシャン」と答えるのではないでしょうか。でも音楽業界には実に多種多様な職業があるんです。具体的にどんな仕事があるか、CDができるまでを例にとって見てみましょう。
CDの制作はまず「いつ、どのような楽曲を発売するか」をレコード会社が企画するところから始まります(*1)。それが決まったら、作詞家や作曲家たちが曲作りにとりかかります。できあがった楽曲はデモテープ(*2)に録音されて歌手のもとへ届けられ、いよいよレコーディング。ミュージシャンやアーティストが表現する楽曲を、レコーディングプロデューサーやエンジニアなど多くのスタッフが録音・編集して、ようやくCDが完成します。
そして、プレス工場で量産されたCDがショップに並ぶ―皆さんが1枚のCDを手にするまでに、こんなにも多くのプロセスを経ているのです。
このほかにもレコーディングに必要な楽器や機材のレンタルを行ったり、CDジャケットを制作したりと、本当にたくさんの人たちが関わっています。
また、その一方で、1枚でも多くのCDを売ろうと頑張っている人たちがいることもお忘れなく。ノベルティグッズの制作やテレビ、雑誌での宣伝告知など、CDの販売促進活動も行われています。
「音楽にまつわる仕事ってこんなにあるんだ!」と驚いたのでは?でもこれはCD制作だけに限ったほんの一部。音楽業界全体に目を向ければ、その職業や仕事はもっとたくさんあるんです。くわしくは次の章で紹介しましょう。
(*1) 企画については、レコード会社のみならずアーティストや彼らの所属するプロダクション、外部のCDプロデューサー、広告代理店などを交えて話し合われることもあります。
(*2) 作曲者が関係者に新曲の概要を把握してもらうため、簡単に作った曲を録音したテープのこと。
音楽関係の他の仕事を紹介する前に質問です。皆さんは音楽業界で働くことについてどんなイメージをもっていますか。
「結構たいへんそう」と思っている人が多いのではないでしょうか。
中には、親やまわりの人に「オレさあ、ミュージシャンになりたいんだ」と夢をうちあけて、「音楽業界への就職は狭き門なんだよ」「音楽の仕事だけじゃ食べていけないんだから」などと、反対されたり笑われたりした経験がある人もいるのでは―。
たしかにミュージシャンやソングライターとして第一線で活躍するには、相応の実力が求められます。感性や努力、そして運といった要素がそろわないと夢を実現できない厳しい世界です。幸運にメジャーデビューできたとしても、皆さんも知っているように競争が激しく、その先ずっと音楽で生計(暮らしていくための手立て)を立てられる保証はありません。
「な~んだ、ミュージシャンはあきらめろっていうお説教か」と思った人、ちょっと待って!ここから先が大事なんです。
第1章でも紹介したように、CD制作だけでも音楽業界にはいろいろな仕事があります。だとしたら、アーティストのような“音楽を表現する感性重視の仕事”だけにこだわらず、レコーディングディレクターや音響エンジニアなど “音楽を技術で支える仕事”に目を向けてみるのもひとつの手ではないでしょうか。
また、レコード会社の企画担当になって、消費者や時代のニーズに合わせて戦略を練る“ヒット曲の仕掛け人”を目指すという道もあります。
そう、ひとつの職種にこだわらず視野を広げれば、就職のチャンスや活躍の場はグーンと広がるのです。あなたの考え方、そして努力次第で、好きなことを仕事にして生活していくことは十分可能なのです!
狭いようで実は奥行きの深い音楽業界には、他にもこんな仕事があります。あなたの好きなことや得意分野と照らし合わせて、今後の進路の参考にしてみてくださいね。
(職業名をクリックすると、詳しい内容を説明したページに移動します)
音楽業界に関わる仕事がいかに多いか、そしてどんな視点で仕事選びをすればいいか、ちょっとは想像がふくらんできたでしょうか。
では、私たちの暮らしになくてはならない音楽が、どのように守られているか―おしまいに大事な著作権の話をしていきましょう。
皆さんは“著作権”って知っていますか?聞いたことはあるけど、意味はよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
著作権というのは、音楽や文学、美術作品などを保護する権利のこと。作品をつくった人の承諾なしに、勝手に作品を使ってはいけないと法律で定められているのです。
ブランドもののバッグをコピーした商品や、DVDの海賊盤を作って販売した人が逮捕されたというニュースを聞いたことありませんか?音楽もそれと同じように、第三者が勝手に利用して商売したりしてはいけません。作品をつくった人を著作権者(*3)と呼び、その人以外が楽曲を利用する場合は、著作権者に著作権料を支払うしくみになっています。
音楽はブランドバッグのようなかたちではないけれど、作り手にとっては大事な財産。作り手の感性や才能から生まれ、多くの人たちが関わって作りあげてきた楽曲が、何のことわりもなしに使われて、お金もうけの道具にされているとしたら…そんなことが起きないように法律で守られているのです。
そして、この音楽著作権の管理などを専門に行う会社があります。
最近では、“着うた”などの音楽配信サービスも普及して、パソコンや携帯電話から手軽に音楽を入手できるようになりました。誰もが簡単に音楽を利用できるようになった反面、違法コピーなどが問題になっています。著作権の管理はいろいろ面倒な手続きも多く、勝手に楽曲が使われないか常に目を光らせているのは大変なこと。だから、専門会社におまかせというアーティストも多いのが現状です。
また、違法行為から音楽を守るためにコピーを防ぐ技術なども登場しています。ほら、ここにも音楽業界の仕事が!音楽に関わる仕事ってほんとうにいろいろあるんです。業界の奥深さがわかってもらえたでしょうか。
(*3) 著作権者とは著作権の権利をもつ人のことをいいます。音楽著作権の場合、楽曲の作詞・作曲家、編曲家や音楽出版社(著作権管理を行う会社)などがこれに相当します。
演奏している場で楽曲に耳をかたむける―それが、かつての音楽の楽しみ方でした。その後、録音技術が発明されて音楽を持ち運びできるようになり、現在ではインターネットによる音楽配信や、プロ仕様の本格的な作曲・編曲ツールの入手なども可能に。昔は思いもつかなかった技術が次々と生まれ、より便利で手軽に楽しめるようになりました。
それと同時に音楽にまつわる仕事も、さらなる広がりを見せています。著作権に関わる仕事もそうですし、センスをいかした選曲で皆を楽しませるクラブDJのような仕事も脚光を浴びています。これからも新たな職業が続々と登場していくのでしょう。
音楽の楽しみ方が人それぞれのように、業界での働き方もさまざま。この特集を読んで、そのことを理解してもらえればうれしいです。皆さんの好きなことや適性、得意分野などをふまえながら、自分なりの職業選びをしてもらえればと思います。
≪参考文献≫
『音楽業界ウラわざ』落合真司・著、青弓社・刊
中・高校生に送る「業界特集」
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