染織
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イラクサ、苧麻(ちょま)といった草皮や、楮(こうぞ)、藤、葛(かずら)などの樹皮を原材料とした織物が縄文時代から行われてきた。絹織物の技術は、古墳時代の中国大陸・朝鮮半島との交流により、2万人近い職人が日本を訪れたことにより日本に入ってきた。ただし絹が衣服に用いられるようになったのは、飛鳥時代以降。しかし当時は貴族のハレの場の衣装としての生産だった。地方で絹織物が生産されるようになったのは、鎌倉時代に入ってから。これは中央政府の染織生産が衰退したことを受けている。応仁の乱が起きると、京都の職人がこれを避けて全国に流出し、京都の技術が全国に伝播されるようになった。また明朝との貿易によって、ふたたび中国の技術が日本に入ってきた。そのため、輸入に頼っていた木綿や一部の染料が国内生産できるようになった。
染織には古来よりさまざまな技法がある。おおまかにいうと、その技法は「染める」、「織る」、「装飾する」に分けることができる。特に代表的な技法について紹介すると、まず「染める」技法のなかで有名なのは、なんといっても「友禅染」である。友禅染は、江戸時代の絵師宮崎友禅斎があみ出した技法である。友禅斎は本来は扇の絵師であったが、ある呉服屋の依頼を受けたことから、着物の図案を考えるようになったという。その背景には、1683年に出された江戸幕府の奢侈禁止令がある。これは華美で高価な衣服を控えさせるためのもので、金銀箔の刺繍や手のかかる染色法であった総鹿(か)の子という技法を禁じた。そのため友禅染は、当時の美しい着物を欲する女性と呉服屋を救うものであったという。「織る」技法で代表的なものに、「紬(つむぎ)」、「縮み」、「絣(かすり)」、「上布」がある。「紬」は絹織物で、繭(まゆ)から紡ぎ出した糸を使い、農民が自家用品として作っていた。文様が細かいものほど高級品として扱われる。「上布」は薄手で上等な麻糸を使う織物のことを指す。「縮み」は木綿・絹・麻などの素材で使われる技術で、布に細かいシワを作る。「絣」も「縮み」同様さまざまな素材に用いられ、文様部分を染め分けた糸を使って織ることによって、柄がかすれて表れる技法である。「装飾する」技法としては、刺繍と、摺箔(すりはく)と呼ばれる金銀箔を糊で生地に貼る技法がある。こうした技術を使った織物は、だいたい高級品として扱われることが多いようだ。
産地:結城紬(茨城県、栃木県)・東京染小紋(東京都)・小千谷縮(新潟県)・牛首紬(石川県)・京友禅(京都府)・博多織(福岡県)・首里織(沖縄県)など
<< 編集部の職業解説 >>
着物地の染色を行う専門家を染色家という。布地の柄をデザインし、手作業で色付けして染色する。日本の伝統的な染色技法には、型染、友禅染、ローケツ染、しぼり染などさまざまな伝統技法で絞り染めたり、描き染めたりといったものがある。「染め」でありながら「描く」といったテクニックやセンスも要求される世界である。最近では着物だけにとどまらず、広くさまざまな分野からも需要が高まっており、繊細で微妙な色彩の染め物が親しまれるようになっている。昔からの日本の伝統は消えることなく、むしろ染め物の技術は世界からも注目されている。1日でできる仕事ではないため、地道な努力が必要だ。経済産業大臣指定の伝統的工芸品のうち、織物については結城紬、西陣織など33品目が、染色品については加賀友禅、京友禅など11品目が指定されています(2005年9月現在)。これらの産地組合に属する企業数は合計で約5000軒、従業員数は約4万人、また伝統的工芸士(「お仕事豆知識」参照)の数は約1600人にのぼります(※1)。このほか、染織に関する伝統工芸は日本各地にあり、それらに携わる人も大勢います。ちなみに、伝統工芸以外も含まれますが、2000年の国勢調査の時点で5万1896人が織布作業者として、また3万9676人が染色作業者として働いていました。
※1 伝統的工芸品産業振興協会ホームページより集計
日本各地にある伝統工芸のうち、実用性、技法、歴史、規模など一定の要件を満たしたものを経済産業大臣が「伝統的工芸品」として指定していますが、その数は2008年8月時点で210品目に及んでいます(※1)。これら伝統的工芸品の製造に産地内で直接従事し、かつ12年以上の実務経験を有している現役の職人には、伝統的工芸品産業振興協会が実施する「伝統工芸士試験」に合格することで伝統工芸士の称号が与えられています。2008年2月現在、伝統工芸士の登録者数は全国で4671人(うち女性が544人)にのぼっています。(※2)
※1 伝統的工芸品産業振興協会ホームページより
※2 日本伝統工芸士会ホームページより
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