特殊造形:特殊メイク
<< 書籍「13歳のハローワーク」の職業解説 >>
血糊や傷、傷痕、アザ、ホクロなどは、ヘア&メイクアップアーティストが作る。たとえば俳優の顔の形を変えたり、若い俳優を80歳の老人に変えたり、人間と猿、人間とオオカミの顔の合成などを、特殊メイクと呼ぶ。特殊メイクは、サイレントの時代からいろいろと試されてきた。大昔は、鉛筆のようなものでシワを描くだけだったが、その後、さまざまな素材が開発されて、今では気孔のある人工皮膚なども生まれている。最近の大きな傾向としては、フォーム・ラテックスと、スモールスケール・メカニカルの2つがある。フォーム・ラテックスは、ゴムの乳液のようなもので、加工性と弾力性に優れているため、人間の顔にぴったりと貼りついて、さまざまな変装が可能である。1968年制作のオリジナル版『猿の惑星』から本格的に使われるようになった。現在、特殊メイクといえば、フォーム・ラテックスを意味するほど、あらゆるジャンルの映画でひんぱんに使われる。スモールスケール・メカニカルとは、コンピュータ制御の小さなメカを内部に埋め込んだ人工皮膚や、からだの一部のことだ。顔の肉が盛り上がって動いたり、顔の筋肉の異常な動きなどを見せることができる。脚本や監督の意図を理解する能力に加えて、現場での経験が何よりも大切だ。専門学校を出て、特殊造形の会社に入り、経験を積むのが一般的。日本にも若くて優秀な特殊メイクが増えているが、ハリウッドを目指すのも選択肢の1つである。
<< 編集部の職業解説 >>
特殊メイクアーティストはメイクアップアーティストの中の1つの職業で、通常のメイクアップを担当することも多い。特殊メイクアーティストというと、『猿の惑星』や『スターウォーズ』などのSFX映画を思い浮かべる人もいるだろう。もちろんこうした作品は、特殊メイクアーティストの腕の見せ所だが、特殊メイクが活躍できる場は、それ以外にもある。例えば、ドラマなどで、同じ俳優が登場人物の一生を演じることがあるが、その際、メイクアップアーティストは、メイクアップの技術によって、青年期から老年期までの様々な風貌を作り上げる。こうした技術も特殊メイクの1つといえる。特殊メイクにはメイクアップの基礎知識・技能はもちろん、その上に最新の特殊メイク技術を身につけていることが望ましく、独創性も必要になるだろう。斬新な発想や新しい技術を生み出した技術者には、この分野の第一人者として世界レベルのニーズがあるかもしれない。特殊メイク制作会社の社員で月給20万円前後。特殊メイクアーティストと呼ばれるくらいの技量を身に付けたうえで独立した場合の収入はさまざまです。数万円から数百万円と腕次第でかなりの幅がつきます。(※1)
※1『他人の給与明細がこっそりわかる本』廣済堂文庫よりp249
特殊メイク関連の学科が設けられている専門学校などで学んだ後、日本に20ほどあるといわれている特殊メイクの専門会社に就職する方法が一般的。人体や色彩、材料に関する知識や、造形やデッサンのスキルなど、幅広い知識と技術が求められます。作業の過程でヘアメイクを行うことも多く、美容師の資格を持っている人もいるようです。(※1)
※1『あしたをつかめ平成若者仕事図鑑』NHK出版よりp298
人体部分の模造技術は、乳がんの手術で切除した乳房や、事故で失った手足の指などの復元にも利用されています。つまり、特殊造形の技術を身に付けておくことで、意外にも医療関係の仕事に就ける場合も。逆に、映画の仕事に携わるにしても、人体に関する医学的、解剖学的知識があれば有利といえます。(※3)
※3『人間関係がニガテでもうまくいく天職ガイド』廣済堂出版よりp179
【特集:13hw編集部シリーズ】ズバリ!留学って仕事に役立つの?
この職業解説について、感じたこと・思ったことなど自由に書き込んでね。
わからないこと・知りたいことは、働いている大人に聞いてみよう!
- 俳優担当
- 予告編制作
- 操演(そうえん)